本研究は、介護保険制度の厳しい財政状況の中、高齢者の健康維持・改善の視点から、介護保険事業の効果的な運営における促進要因と阻害要因を明らかにし、各自治体の地域特徴を踏まえた事業運営の在り方を検討することを目的とした。 まず、全国の市区町村介護保険者を対象に、介護保険事業報告のデータを用いて、要介護認定率と平均要介護度の経年的な変化を算出した。また、分析対象の選定には、クラスター分析(要因:高齢化率と高齢者人口密度)による6つのクラスターごとに行った。その結果、大都市圏とその周辺都市の特徴があるクラスター(第1・2・3クラスター、低高齢化率・高高齢者人口密度)では、平均要介護度と要介護認定率の改善がみられる対象がなかった。しかし、過疎地の特徴があるクラスター(第4・5・6クラスター、高高齢化率・低高齢者人口密度)では、平均要介護度と要介護認定率の改善がみられる介護保険者があり、この介護保険者にインタビュー調査を行った。 インタビュー調査の結果、要介護認定率と平均要介護度の改善の要因として、まず、前期高齢者が多く存在する地域、つまり元気な高齢者が多いことがあげられる。次に、介護予防・日常生活支援総合事業を活用している介護保険者では認定率が低かったこと、介護予防及びリハビリテーションを行う地域の受け皿を開発し、活用している介護保険者では、要介護認定率と平均要介護度の改善がみられたことが背景と考えられる。
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