研究課題/領域番号 |
18H05737
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
雪村 まゆみ 関西大学, 社会学部, 准教授 (00607484)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 世界遺産 / 日本遺産 / 文化財 |
研究実績の概要 |
本調査では、文化庁による各自治体を対象に世界遺産候補の公募に応募した文化財に関して、その後、各地域において 世界遺産登録運動は継続されていくのか/いかないのか等、いかにして文化財の価値体系のなかに位置づけられていくのか、考察した。まず、これらの文化財に対して、その後の動向をホームページ等の追跡調査を行い、1. 登録運動を継続的に行っている場合、2.他の国内の認定制度の枠組みに位置づける場合、また、3.他の地域と連携する場合、4.世界遺産登録事業を一旦中止する場合と4つに大別した。 2018年度は、2.他の認定制度の枠組みに位置付ける場合、3.他の地域と連携する場合について、その後の動向を調査した。2.に関しては、国内のみならず、「世界農業遺産」や自然遺産等、他の認定制度の対象となっているものがあることが明らかとなった。また、3.他の地域と連携する場合は教育資産や国宝に指定された城郭といったシリアルノミネーションの手法が念頭におかれていることが明らかとなった。そのなかで、教育資産である旧閑谷学校に関して、現地調査を行うとともに、岡山県立図書館にて世界遺産にかかわる行政資料やシンポジウム記録等の資料収集を行った。 また、国立国会図書館においては、各地域とイコモス国内委員との連携に関する資料を収集した。 報告書やインフォメーション誌等から、世界遺産を目指す地域(教育遺産、防災遺産等)とイコモスが連動した文化財保護の取り組み、また、世界遺産委員会報告についての資料収集を行うことができた。また、「木の文化」の保存に関する日本の存在の大きさについて、とりわけヴェニス憲章から奈良ドキュメントへの流れについて、明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の成果は、4類型に分類した、それぞれを代表する文化財を有する地域の図書館等において、世界遺産にかかわる行政資料や地元紙など、より詳細な記録資料を収集するとともに、調査地域の保存基準あるいは世界遺産および他の認定制度への登録プロセスについて、体系的に資料集を行なうことができた点にある。世界遺産候補の公募に応募した文化財に関して、その後、各地域において 世界遺産登録運動は継続されていくのか/いかないのか等、途中経過から最新の動向まで文献資料やホームページ等で網羅的に把握できた。とりわけ、教育資産の一つとして他の地域と連携している文化財に関しては、旧閑谷学校を事例に考察をすすめることができた。また、イコモス国内委員会と各地域(教育遺産、防災遺産等)の協力体制についても時系列的に追跡することができた。 2018年度は文献・資料調査を中心にすすめたが、これらは、2019年度に行なう聞き取り調査の基礎資料となりうる。 なお、本研究の成果の一部は、2019年度刊行予定の書籍(共著)において「世界遺産・日本遺産」の項目として公開する。また、出版社と調整しながら、成果の英文出版のための準備を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、文献調査のみならず計画的に関係者に聞き取り調査および郵送による質問紙調査を実施する。各カテゴリー1から4の調査地域は以下を予定している。なお、百舌鳥・古市古墳群(大阪)に関しては、2019年度世界遺産登録の候補になっているため、世界遺産委員会の 議論等も含めて継続的に注視する。 1 登録運動継続中(1)世界遺産暫定リスト:百舌鳥・古市古墳群(大阪)、(2)世界遺産暫定リスト候補:四国八十八箇所霊場と遍路道(愛 媛、高知、徳島、香川)/ 2 他のリストに登録(1)世界農業遺産:阿蘇地域(熊本) (2)日本遺産:天橋立(京都、調査済み)(3)重 要文化的景観:金沢の城下町(石川,調査済み)/ 3 他の地域と連携(1)世界遺産:萩(山口、調査済み)、(2)日本遺産:教育資産 旧弘道館( 茨城)、旧閑谷学校(岡山)(調査済み)、足利学校跡(栃木)(2015)/ 4 中止 松島―貝塚群に見る縄文の原風景(宮城) 2019年度は、2.他の国内の認定制度の枠組みに位置づける場合、具体的にどのような経緯で新たな認定制度にシフトしていったのか、について関係者に対する聞き取り調査を行なう予定である。また、3.他の地域と連携する場合についても、他の地域と連携する契機など、聞き取り調査によって明らかにする必要性がある。さらには、4.に関して、世界遺産登録運動を中止したのちの、地域の文化財の保護、活用に関して調査を行う。 また、国立国会図書館において、世界農業遺産等他の認定制度と日本の文化財保護制度の関係性について考察するための資料を収集する。
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