本研究の目的は、1)場面緘黙の研究および支援先進国において、教育や治療に用いられる教材や玩具をWEB調査し、それらの特徴を整理すること、2)学校や園の教師による教材や玩具の使用および評価によって、わが国の実態に合わせた活用方法を検討すること、であった。 最終年度は、調査と実践から得られた成果および課題を論文にまとめた。本研究の成果として、下記のことが挙げられる。 1)北米や英国の研究機関や支援団体のWEB情報から、発話支援に活用できる市販の教材や玩具の情報が得られた。それらを取り寄せ、機能ごとに分類したところ、ものの呼名や「はい/いいえ」での応答、定型表現による質問といった型のある発話で、1対1や小グループで実施できるため、不安気質のある場面緘黙に適用しやすい特徴があった。 2)調査より得られた教材や玩具14種を用いて、教師と保育士40名を対象にグループワークを実施し、学校や園での援用可能性を評価した。a)同年代の子どもとの関係づくり促進に対する期待度は、ルールが明確なカードゲームやボードゲームで特に高く、b)使用が見込める場面として、休み時間、各教科、特別支援学級など適用範囲が広かった。c)適用年齢は、音声に反応するロボットや通信機器など単純な仕組みのものは就学前や低学年から、英語学習や高度な認知機能が関わるゲームは中学生・高校生まで使用が見込まれた。本ワークを通して、教材や玩具を用いることで、自由遊びや外国語コミュニケーションなどの普段の場面にも、支援を容易に取り入れられるといった教師自身の気づきも見られた。 本研究から、海外の治療場面で活用されている教材や玩具は、日本の教育現場においても十分適用可能なことが示唆された。今後はより具体的な場面で効果を検証していく必要がある。
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