研究実績の概要 |
日本における若年層の自殺予防の観点から、子どものメンタルヘルスをいち早く把握し教職員等による早期介入を目的に、子どもの主観的健康観(感)(以下、主観的健康感とする)に関する調査を実施し、その状態を明らかにした。 まず子どもの主観的健康感を把握するにあたり、子どもに分かり易いツール(「からだのお天気」及び「こころのお天気」シート)を開発した。それを用いて小学校、中学校及び高等学校6,421名を対象に、2018年11月から2019年6月にアンケート調査を実施した。さらに実際の相談対象や抑うつ傾向、及び学校を含む日常生活への満足感との関連を探った。 その結果、主観的健康感は、小学生より中学生、中学生より高校生が低いことが明らかになった。相談対象(複数回答)では、いずれも「親祖父母」及び「友達」が多くを占め「相談しない」者が、ある程度存在していることが明らかになった。主観的健康感と抑うつ及び基本的生活では、相関が見られた。以上のことから、本ツールは、子どものメンタルヘルスをいち早く把握できるための有益なツールであると考える。 次に、子どもたちの関わりに焦点を絞り、主観的健康感を高めるためのプログラムを作成した。公立中学校2年生153名を対象に「コミュニケーションに関する講座」(話の聴き方やリフレーミング等)を実施した。実施前後の比較から、主観的健康感そのものの高まりは見られなかったが、相談対象において「友達」が有意に増加した。今後は、実施プログラムの内容や実施時期、実施方法の工夫が必要である。 今回の研究から、学年間及び性差の検討、詳細な解析の必要性が示されたが、開発したツール「からだのお天気」及び「こころのお天気」は、教職員を含む関係者だけでなく、子ども自身が自らの主観的健康感を客観的に捉えられ、早期発見につなげられるものであると考える。
|