研究実績の概要 |
発達性読み書き障害を生じさせる認知的要因は、音素への変換が規則的なのか不規則なのかという文字体系(Wolf et al.,2000;Francisca, 2008; Uno et al.,2009)や文字に対応する音韻単位の「粒性」の「粗さ」(Wydell & Butterworth, 1999) によって異なることが明らかになっている。したがって、読み書き発達の特徴がモノリンガル児童とバイリンガル児童で異なる可能性が考えられ、モノリンガル児童用の検査をそのままバイリンガル児童に適応しても良いのか疑問が残る。国際化が進むにおいて、読み書きが困難なバイリンガル児童を発見し、支援することは急務な課題であると思われる。 本研究の目的は、読み書きが困難な日本語と韓国語のバイリンガル児童に役立つ検査法及び科学的根拠のある指導法を考案することであった。昨年同様、2019年度においても日本語と韓国語のバイリンガル児童の教育を行っている小学校にてモノリンガル児童を対象に提案された発達性読み書き障害の検査法の適用可能性するための学校調査を行った。2年間研究調査を通して、学年による成績の差はあったものの、基本的にはモノリンガル児童を対象として標準化された検査を用いてバイリンガル児童の読み書きの学習到達度を評価することは可能であると考えられた。また、日本語と韓国語のバイリンガル児童と日本語モノリンガル児童の読み書きに関わる認知能力を検討したところ、バイリンガルか、モノリンガルかに関わらず、音韻認識能力、視覚認知能力、自動化能力、語彙力が彼らの読み書きの習得に関与している可能性が示唆された。 本研究によって、モノリンガル児童用の検査法がバイリンガル児童へ適応可能であることが明らかになった。本研究の意義として、今後、日本語を第二言語とするバイリンガル児童への検査法の考案や支援に適応可能な基礎的データとなるのではないかと思われる。
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