研究課題/領域番号 |
18H05750
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
青木 浩幸 国際基督教大学, 教養学部, 助教 (90826439)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 教科プログラミング題材 / 机上投影プロジェクションマッピング / モーションキャプチャ / Pythonプラットフォーム / 全天周カメラによる活動記録 / レーザーカッター |
研究実績の概要 |
教科におけるプログラミング課題の検討を行った。対象教科として小学校算数を設定し,反復処理を用いた正多角形の描画(5年生),条件分岐処理として数表・方眼上における公倍数(5年生)や多様な形の求積(6年生)の課題を考案した。これらの課題についてプログラミング例を作成したが,その際,既存のプログラミング環境であるScratchと,独自のプログラミング環境を開発して使用した。独自のプログラミング環境はより最適な命令セットや機能を検討するために開発したもので,多様な環境で比較検証できるようにWEBプラットフォーム(HTML+javascript)で開発している。 今回の研究で開発する「対象タンジブルプログラミング環境」の開発技術の検討を行った。ハードウェア面では「机上投影プロジェクションマッピング」と「モーションキャプチャ」を行うための機材の選定と性能検証である。立体的な配置から投影・撮影するための,軽量でありながら十分な性能を持つ機器(Optomaのポータブル短焦点プロジェクタとIntelのデプスカメラ)を選定,それを支持するために撮影用機材を採用し,映像信号の配線をおこなってハードウェア構成を構築した。ソフトウェア面ではプラットフォームとして,配布と処理速度に有利な汎用言語(C#(WPF))と試行錯誤に有利なスクリプト言語(Python)の選択肢があり,研究における開発の性格,映像処理に用いるOpenCV,Intel Realsense SDKの対応状況,およびGUIの構築のしやすさを調査検討の結果,Pythonプラットフォームによる開発を決めた。 その他,タンジブル教材制作のために使用するレーザーカッターの操作技術を習得し,協調プログラミング活動記録のために全天周カメラによる撮影と映像分析手法(使用するアプリケーションソフトウェア)の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システムの開発にあたっては,予想外の調達の遅延・情報不足の困難を経験した。しかし,並行して教科プログラミング課題の検討を進めていたことにより,全体的に研究の進行に問題はなかったと考えている。これらの状況について,以下に詳細を説明する。 【システム開発・ハードウェア面の状況の詳細】仕様・性能的に適切なものを選定できたが,調達にあたってシステムの中心となるコンピュータがメーカーの製品ラインナップ更新タイミングにあたったことや,理想とした性能のプロジェクタが品薄だったことで入荷が遅れたことは予想外であった。そのため実システムを組み上げての開発は年度末近くになった。 【システム開発・ソフトウェア面の状況の詳細】各種ソフトウェアのバージョンアップ(Open CV 4.0,Intel Realsense SDK2, Visual Studio 2019)から時間が経っておらず,解説書籍が存在しないなどの情報不足はオープンソースライブラリーの使用により,ソースに当たって実現可能性を探ったことは通常の手段では困難な発見だった。プロジェクションマッピングやモーションキャプチャーは研究担当者にとって新しい技術やプロットフォームであったため,学習と習得に労力を要した。 【教科プログラミング題材検討の状況の詳細】一般的に用いられている言語Scratch,およびWEBプラットフォーム(HTML+javascript)における独自プログラミング環境を用いて始めた。これは多様な端末環境で実行可能であるため,他人に試用してもらうことが容易で,教育関係者からの意見を聞きながら検討を進めることができた。また,研究担当者にとって既知のプラットフォームであったため技術的困難が少なく,効率的に研究を進められた。
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今後の研究の推進方策 |
システムのソフトウェア部分(プログラミング環境)の開発を進め,春のうちにプロジェクションマッピング環境において,デプスカメラを用いた自動キャリブレーションとジェスチャー・タンジブル教材認識を実現,夏までにプログラミング環境を開発しシステムを完成させる。夏には研究の着想と教育的意義について国際会議iCoME(日本教育メディア学会と海外関連学会の共同開催。場所:深セン)での発表を予定している。夏から秋にかけて子どもを対象にした実践研究を行い,秋から冬の間に実践研究の成果を含めて国内向け発表を行い,冬に論文執筆・投稿を行う。投稿先は日本教育メディア学会もしくはiCoME関連の英文誌を計画している。 当初は複数のグループで実践することを考え,プロトタイプとそれを発展洗練させた実用環境の2つを開発することを構想していた。ハードウェアの構築に時間がかかったスケジュールも考慮して,研究の重点を実用環境システムを使用した実践から,バリエーションの検討に移行したいと考えている。 具体的には,1年目のプロトタイプよりも単純な仕組みでどこまで本来やりたいことが実現できるかの検証である。これはより研究の成果を普及するのに役立てられる。具体的には設置に手間がかかる3つのプロジェクターを空中に配置するのではなく,卓上に置いた単体の超単焦点プロジェクターにより実現させるアイディアである。この案はプロジェクションマッピングにあたって影が多く生じるデメリットはあるものの,構築が簡単であり,明るいところでも利用可能で,さらにプロジェクターは専用ではなく多用途に使えるという大きなメリットがある。試算では費用面ではあまり差は生じない見込みである。
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