最終年度は近年生じた子どもの情報環境の変化に合わせた開発の方向性の修正と,研究成果の子ども対象の実践評価の代替として大学生を対象とした技術的課題の解決と困難の抽出を行った。 パンデミックによるオンライン学習導入の影響から一人一台の情報端末が義務教育段階の小中学生に行き渡ったことが情報環境の大きな変化である。これにより当初計画していたワークステーションによる集中処理方式から個別のChromebook端末による分散処理方式に転換,操作の入力方式もデプスカメラによるモーションキャプチャーからフィールドのドットパターンを認識するタンジブルブロックに切り替えた。結果として技術的難易度が下がり,汎用的機材を使用しながら高い操作安定性を確保した普及に適した形態に進化できた。 子どもを対象にしたプログラミング環境の開発を目指してきたため,研究の仕上げでは子どもを対象にした実践研究を目指してきたが,依然として残るパンデミックの影響で機関外の活動は制限され,代替の取り組みに縮小して対応した。大学生アルバイトを対象に,既成のプログラミング教材による活動と提案のタンジブルプログラミングを対照して,技術的課題の解決や困難の洗い出しを行った。研究の進展によってタンジブル性を活かしたインタラクティブな操作性への要求が高まり,プログラミング言語が従来の汎用言語から大きく変わるため直感的理解のための仕掛けが課題として残った。 具体的操作期の子どもを対象にした協調的プログラミングを,教科の学びと関連づけて実現することを目指してきたが,パンデミックの影響で制約を受けながらも,時代の変化に対応した研究に進化できるだけの余裕が与えられたのは有意義だった。空間拡張現実のための機器も研究機関中に入れ替わっていたが,パンデミックが収束しつつある今後さらなる研究の進展が期待できるだけの環境と技術を獲得することができた。
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