研究実績の概要 |
本研究の目的は,統計的探究能力の育成を目指した能力ベース統計カリキュラムを開発するために,統計的探究能力の段階的な発達過程を構築することである。統計的探究プロセスを実現しようとする国内外の先行研究は多くみられ,次期学習指導要領においてはそれが算数・数学科の指導内容として明示的に位置づいているが,その能力がいかにして育成され得るかに取り組む研究はほとんどなされていない。 そこで,2018年度においては,カリキュラム開発のための理論的基盤を整備することに中心的に取り組んだ。本年度の研究成果は大きく次の3点にまとめられる。第一に,Wild & Pfannkuchが示した統計的探究プロセスについて,統計に特徴的な「Problem」と「Plan」の相により焦点をあて,可能性のある段階的な発達過程を国内外の先行研究の知見に基づいて構築するとともに,その視座から我が国でこれまで取り組まれてきた研究成果を分析して,そこで記述されている学習者の様相がどのように特徴づけられるのかを再解釈した。第二に,統計的内容が算数・数学科以外の教科でも潜在的に取り扱われていることから,理科と社会科においていかなる統計的探究がなされ得るのかを明らかにし,算数・数学科との関連がどのように作られ得るのかを検討した。第三に,カリキュラム開発のための理論的背景として,現代哲学である推論主義を参照しながら推論主義に基づく統計指導のあり方や問題点等について検討した。
Wild, C. J. & Pfannkuch, M. (1999). Statistical thinking in empirical enquiry, International Statistical Review, 67(3), 223-265.
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