研究課題/領域番号 |
18H05753
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
Huang WanChien 同志社大学, 社会学研究科, 助手 (60823440)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 母語継承 / たいまつプログラム / 新住民言語 / 台湾 / 母語授業 / 国際結婚 |
研究実績の概要 |
1)「台湾の『たいまつプログラム』における教育方法―母語教育現場の教師と生徒の声―」:生徒の母語学習時間が足りない、また、児童生徒に適切な母語教材が必要だという教師の声が高まっている。一方、「たいまつプログラム」の母語課程を受けた徒をインタビューした結果、家庭内で母語で会話する頻度が増えたりするという現状が明らかになった。2)「国際結婚家庭における母親の母語継承に関する価値観―台湾でインタビューからみえてきた現状と課題―」:台湾における国際結婚家庭での、東南アジア出身の母親が、家庭内でどのような意識で母語を捉えているのかインタビューから明らかにした。母親自身が母語に対して高い意識をもち積極的に継承していこうとしても、台湾の夫やその家族、あるいは、台湾社会における偏見によって葛藤している様子が浮かびあがってきた。 <以下発表>3)「グローバル化による台湾の子どもの言語教育に対する一考察」:以前「たいまつプログラム」という東南アジア言語の母語教育コースでは、教材問題、教員不足、教員養成問題、生徒のやる気の問題などが教職員に指摘されている。一方、「新住民言語」の導入が、子どもの学習上の負担になるという心配が募ると考えられる。4)「台湾のマイノリティ言語教育における教師の質に関する考察」:「新住民言語」の教員養成、英語や郷土言語などの教員養成課程に比べ不十分だと考えられる。今後、小中高とも「新住民言語」課程が実施されるので、授業目的と到達目標はより明確することが必要であることが指摘された。5)「台湾における子どもの言語教育にみる外国籍配偶者の母語に関する過去と現在の変化」:「たいまつプログラム」という東南アジア言語の母語教育コースが導入されたことによって、現在使用され始めた家庭が増えてきた。一方で、授業外で勉強する場合はどうか、宿題の確認や支援などの問題が浮上すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度には、申請者は、本研究課題にかかわる様々の視点からの研究調査を行い、その後、3回の学会や研究会で発表した。それぞれは、「台湾のマイノリティ言語教育における教師の質に関する考察」、「台湾における子どもの言語教育にみる外国籍配偶者の母語に関する過去と現在の変化」、「異なる「声」をどう分析に活かすか―台湾の国際結婚における継承言語の事例から―」という各視点で本研究課題を明らかにした。 また、現在、台湾における子どもの言語教育に関する現状を「グローバル化による台湾の子どもの言語教育に対する一考察」というトピックを通して、公開講演を行った。 さらに、「台湾の『たいまつプログラム』における教育方法―母語教育現場の教師と生徒の声―」の論文が掲載されていることだけではなく、『アジアの質的心理学―日韓中台越クロストーク―』という書籍には、第11章の「国際結婚家庭における母親の母語継承に関する価値観―台湾でインタビューからみえてきた現状と課題―」の執筆を担当し、出版された。 以上の理由で、2018年度には、本研究課題に対しておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、以前、「たいまつプログラム」を実施した経験がある四つの小学校(都市と過疎地)を選定して、校長や行政職員や母語教師などと事前に協力の約束を取り付け、彼らを訪問する。「新住民言語」のフォーマル教育が始まる前、いわゆる準備段階では学校側の具体的な準備作業、教員採用、カリキュラム、授業の実施方法などの情報を収集する。具体的に二つの研究調査の方向から進行する。1)台湾教育部は、2019年度より、小学校における「新住民言語」選択科目が3,338クラスを開設する予定を立てた。そして、2,664名「新住民言語」教師を求めようとする。しかし、2015年の「たいまつプルグラム」という母語教育コースの終了から2019年の授業開設まで、わずかの3-4年の間、2,500名以上の専門の「新住民言語」教師という人材を養成して求めるのに、懸念があると思われる。そのため、「新住民言語」を教える教師に関する採用・教員養成、免許・資格の取得などのプロセスを明らかにすることは、一つ目の研究調査の方向を行う。2)「新住民言語」のフォーマル教育のため、それぞれの学校の関係教職員にインタビューを通して、授業の到達目標や実施方法や期待などを明らかにすることは、もう一つの研究を行う。それによって、各学校の「新住民言語」授業の実施に対する想いや態度を考察し、共通や相違なところを明らかにすることができる。 一方、インフォーマル教育において、「新住民言語」の母語授業が始まった後、家庭内の母語使用状況、また、これまでの母語継承意識と行動について、どのような変化が起きるか、国際結婚家庭のメンバー(親、子どもなど)にインタビューをして、明らかにする。 上記の二つ研究方向へ、2019年度の推進方策として研究を進めていきたとと考える。
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