本年度は主に二つの研究を行っていました。第一、なぜ、わずか10年間の間、東南アジア諸言語学習は台湾社会で重視・発展されてきたのか、その台湾政府の動向と支援策といった背景や経緯などを明らかにした。この研究によると、①東南アジア出身の母親の母語文化を継承させられる②新住民子女が、将来の台湾と東南アジアの間の架け橋としての人材を育成するため、東南アジア諸言語が話せるように育てる③マイノリティである東南アジアから来た外国籍配偶者の母語と文化を尊重するという意義がある。さらに、2019年の「新住民言語」が定着したら、④台湾は多言語多文化社会へ、より一歩邁進するだけでなく、多文化共生社会を実現できる⑤多文化共生社会を実現させるために、「新住民言語」という言語教育から着手する必要がある、ということがわかった。 第二、2019年度から実施する「新住民言語」カリキュラムに焦点を当て、「新住民言語」に関する教育を理解することを目的とし、その教育理念から、学習目標などの規定やプロセスを明らかにした。また、「新住民言語」カリキュラムの教育上の位置づけを考察した。2019年9月から、児童は「新住民言語」授業を履修することになり、「言語」学習領域の履修規程によって、小学校における「本土言語」という教科は週に1コマ選択必修である。その「言語」学習領域において、「新住民言語」が「本土言語」というカテゴリーに配置されるということから見ると、政府は、「新住民」を台湾の人口構成の一つとして認めている、と言えよう。本来、「新住民言語」は、英語と同様に、外国語教育として見なされるべきだったが、国際結婚がきっかけで、外国語教育ではなく、台湾本土の言語の一つとして取り扱われている。これは政府が言語教育の側面から、一般の台湾人と「新住民」を、台湾の重要な国民として同じように扱う、ということを伝えてくれていると考えられる。
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