本研究は、現在の知的障害教育における教科別の指導の実態を明らかにし、実態を基に、問題解決能力の形成に向けた学習プログラムの作成および有効性の検証を行い、知的障害者に対する問題解決能力の形成に向けた学習支援システムの構築を行うことを目的とした。 2019年度は研究1及び研究3に新たに取り組んだ。 研究1では、全国の知的障害部門を持つ特別支援学校728 校を対象に教育課程の調査の実施を通して、知的障害教育における教科別の指導および各教科等を合わせた指導等の実態を明らかにした。その結果、中学部および高等部は外国語科、情報科、社会科、理科は実施率が低いだけでなく、実施している学校・学部においても、ほとんど指導時間が設定されていなかった。よって、今後は社会科、理科の学習内容を検討、実施していく必要性が明らかとなった。 研究2では、2018年に引き続き、特別支援学校教員3名とともに社会科、理科の学習プログラムを作成した。特別支援学校学習指導要領だけでなく、小学校・中学校学習指導要領も参考に、①知識及び技能、②思考力・判断力・表現力等、③学びに向かう力、人間性等に合わせて、学習内容、方法、評価を組み立てた。 研究3では、2018年に引き続き、対象は成人期としたものの、知的障害者に対して研究2で作成した社会科、理科の学習プログラムを実施し、その有効性を検証した。社会科は対象者40名、理科は対象者39名に対して実施したところ、個別の支援を要した対象者もいたものの、全員課題を遂行することが可能であった。 今回は知的障害特別支援学校で作成した学習プログラムを実施することはできなかったものの、本研究結果は知的障害児の学齢期の教科別の指導に対して提言できる内容になりえることが示唆された。
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