研究課題/領域番号 |
18H05763
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
徳島 祐彌 兵庫教育大学, その他部局等, 助教 (00819443)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 体育 / カリキュラム / アメリカ / スタンダード |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)シーデントップの体育理論に関する検討、(2)アドベンチャー教育の単元設計に関する検討、(3)日本における体育の学習指導要領の分析と「逆向き設計」を踏まえた体育実践の検討を行った。以下、それぞれの概要を示す。 (1)シーデントップの体育理論について、思想的背景とカリキュラム論の視点から検討した。1970年代のヒューマニスティック体育とシーデントップの思想的な相違点を、①人間観、②自己のとらえ方、③有能感における他者の位置づけ等の視点から明らかにした。また、シーデントップが提唱したスポーツ教育カリキュラムについて、「バレーボール」の単元例を踏まえて検討し、スポーツの文脈を経験させる学習課題づくりの方法が重要であることを確認した。 (2)アドベンチャー教育の単元設計と授業計画について、アメリカでの展開を整理しつつ、どのようにして学習活動に深まりをもたらすことができるかという視点から検討した。体育科のスタンダードが提唱されて以降のアドベンチャー教育の展開において、目標や評価を明確にして単元設計を行うという考え方も見られたことを整理しつつ、これらの主張に学ぶことが大切であることを指摘した。 (3)2017年版学習指導要領の分析を行い、生涯スポーツ重視などの特徴を整理した。また、「逆向き設計」の考え方を取り入れている日本の体育の授業実践(単元「バスケットボール」)を検討し、体育の「見方・考え方」を育てるうえで「逆向き設計」やパフォーマンス評価の考え方が重要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)研究論文を2本出し、(2)アメリカでのフィールドワークを行い、(3)日本の学習指導要領と体育実践について検討した。 (1)研究論文として、スポーツ教育のカリキュラム設計に関する論文と、アドベンチャー教育に関する論文を執筆した(2本のうち1本は査読ありの論文)。これらの論文はすべて、本研究が明らかにするアメリカの体育理論の系譜の中で重要なものである。 (2)アメリカでフィールドワークでは、ウェストバージニア州とカリフォルニア州にて大学教員へのインタビュー調査と学校見学を行い、文献からは見えない実態を調査した。このフィールドワークで得られた情報は、次年度の研究成果として発表する予定である。 (3)日本の学習指導要領について、生涯スポーツ重視などの特徴を整理した。また、日本の学校において、「逆向き設計」の方法を取り入れ、保健体育の単元設計と授業づくりに取り組んでいる事例を検討した。これらの内容は書籍の一章となっている。 以上から、本年度は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究を踏まえて、今後は(1)ムーブメント教育の展開の整理と、(2)スタンダードに基づく体育カリキュラムの検討を中心的な課題としつつ、(3)本研究の総括を行う。 (1)ムーブメント教育の展開の整理としては、まず①1960年代から1970年代のムーブメント教育の展開を整理する。現在、思想的な背景と教育学の背景に基づいて、3つの立場に整理できると考えている。その上で、ムーブメント教育の対立点を明らかにし、②現在(2000年代以降)の理論的展開を相対化して、ムーブメント教育の意義と課題を明らかにする。 (2)スタンダードに基づく体育カリキュラムの検討としては、まず①2018年度に行ったフィールドワークを踏まえつつ、アメリカの体育の状況(ナショナル・スタンダードなどの国の政策動向、各州の体育政策の状況など)を、SHAPE Americaの報告書をもとにして整理する。その上で②ウェストバージニア州など特定の地域について検討し、アメリカのスタンダードに基づく改革がどのように機能しているのかを検討する。 (3)本研究の総括として、ムーブメント教育、スポーツ教育、アドベンチャー教育などの系譜を2つの立場に分けつつ、スタンダードに基づく体育とは異なる体育カリキュラムの在り方を提案する。
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