研究課題/領域番号 |
18H05764
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松田 弥花 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 助教 (20824171)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | Social Pedagogy / Social Pedagogue / スウェーデン / 教育福祉 / 社会教育・生涯学習 / 北欧 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における教育福祉実践の担い手の在り方を模索するため、スウェーデンにおけるSP(Social Pedagogy)の理論構造及びSPの専門職であるソスペッド(Social Pedagogue=Soc-ped)の専門性を、教育的観点から原理的・実証的に解明することである。 2018年度に実施した内容と得られた成果は以下の通りである。 1.1960年代以降のソスペッド養成課程の変遷:1960年代の福祉国家建設段階から、SPは社会福祉に統合されてきたことは先行研究で指摘されてきたものの、「統合」の具体的な内容や、その背景については解明されていなかった。本研究では、公文書やインタビュー調査によって、SPは国策によって社会福祉に統合されざるを得なかったことや、統合の過程には政府と実践に関わる人びとの間に大きな議論があったことが分かってきた。 2.学校におけるSocial Pedagogy実践:近年のスウェーデンの学校では、教員や特別支援教員、養護教諭、SSW/SCとは異なる役割で、ソスペッドの配置が進んでいる。本研究では、ソスペッド配置の背景や求められる役割を探求するため、スウェーデン南部の学校に勤めるソスペッドに対するインタビュー調査を実施した。近年の子どもたちの孤立化や対人関係の経験の少なさから、ソスペッドが学校における集団づくりや対人関係に関する悩みを抱える子どもたちに寄り添う役割を担っていることが分かった。 3.近隣国におけるSocial Pedagogue養成課程:スウェーデンにおけるSPやソスペッドの専門性の特質を検討するため、デンマーク、フィンランド、ドイツにおけるSocial Pedagogue養成課程に関する調査を行ったところ、スウェーデンのソスペッド養成課程は他国に比べ社会福祉の観点が強いことが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」を選択した理由として、主に以下の2点が挙げられる。 1.当初の予定では、学校に勤めるソスペッドに対するインタビューを実施すると同時に、同校に勤める教員、特別支援教員、養護教諭、SSW/SCに対するインタビューも実施し、各専門職間の考え方の違いや、実践内容・担う役割の違い等について比較検討を行う予定であった。比較検討をすることで、学校におけるソスペッドの専門性がより明確になると考えたためである。しかし、本年度は1回しか渡航できなかったため、以上の調査を実施することができなかった。また、複数校訪問する予定であったが、調整ができず、1校に限られてしまった。 2.公文書の分析やインタビュー調査を行ったことで、SPやソスペッドの専門性に関する実証的な研究を進めることができた一方で、SPにおける「教育」と「福祉」の関係を検討する理論研究は十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」を踏まえ、今後は以下の手順で研究を進める。 まず2019年度前半でスウェーデンに渡航し、2018年度の調査に協力してくれた学校を再度訪問し、ソスペッド及び、教員、特別支援教員、養護教諭、SSW/SCに対するインタビューを実施する。さらに、知り合いの研究者の協力を得て、他の学校も訪問し、上記と同様のインタビュー調査を行う。 2019年度後半は、2018年度と2019年度前半のインタビュー調査で得られたデータを基に、学校におけるソスペッドの専門性について分析を行う。その際、理論的枠組みを補強するため、SPにおける「教育」と「福祉」の関係について理論研究を行う。具体的には、先行研究において「教育」と「福祉」の関係がいかに論じられているかという点に焦点を当て分析する。対象とする資料については、日本やスウェーデンの先行研究と併せて、スウェーデンのSP研究に影響を与えたデンマークやドイツにおける先行研究も適宜参考にする。また、インタビュー調査で得られたデータも活用し、ソスペッドの実践においてSPをいかに理解し、「教育」及び「福祉」的な実践を行っているのか分析する。
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