これまでの日本語多読研究は、実践報告や学習者の意識を分析した研究はなされているものの、実際の活動実施を担う支援者側の意識や学習者への効果的なサポート方法に関しては明らかにされてこなかった。そこで、本研究では、日本語多読に対する学習者側と支援者側の意識とを統合して分析し、日本語多読活動を円滑に、かつ効果的に運営するための新たな支援者用マニュアル開発を行った。 本研究の目的と成果は以下の通りである。1点目に、支援者がどのような背景で活動を運営しているかを明らかにすることである。国内外高等教育機関や日本語学校、地域の日本語教室等における背景や活動実態を調査し、ウェブマガジン連載記事として公開した。 2点目に、日本語学習者及び日本語多読支援者が多読活動に対して持つ意識を明らかにすることである。質問紙調査及びインタビュー調査を行った結果、両者とも多読に対して肯定的な意識を持つ傾向が明らかになった。また、支援者が持つ活動開始の動機や支援実施上の課題等を調査し、類型化を試みた。 3点目に支援者が学習者をサポートする際の効果的な方法を分析し、日本語多読支援者が活動の指針となるようなマニュアル開発を行うことである。前述したウェブマガジンでは、多読に興味のある教師やボランティア等をはじめ、既に多読支援を実施している支援者も対象とし、各々の現場でより円滑に支援を進められるよう、具体的に報告した。また、支援者が陥りやすい実施上の課題に対する解決法を積極的に取り上げ、それぞれの現場で活用できるように工夫した。 以上のことから、本研究では、日本語多読支援者が多読活動をより円滑に、かつより効果的に運営するための素地を作り上げることができたと考えられる。
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