研究実績の概要 |
今年度の主要な実績は以下の2点である。(a) 潜在的因果性 (Implicit Causality: IC) が英語学習者の代名詞解釈に与える影響を報告した論文を全国誌に採択させた。(b) この研究結果に基づき,学習者がICを用いて後続情報をどの程度予測しているのかに関する実験を行った。 1点目に係る実験では,IC動詞を含む英文 (e.g., Ken respected Bob because he...) および日本語文 (e.g., ケンはボブを尊敬していた。なぜならば...) を協力者に複数提示し,その続きを自由に作成してもらった。代名詞が指示する対象を,ICバイアスの方向 (i.e., ICが前の節の主語と目的語のいずれに原因を生起させるか) と,言語 (英語,日本語) を要因とし,統計的に分析した。結果,(a) 英語の代名詞解釈時でも学習者は概ねICに敏感であること,(b) ただし,日本語の時と比べるとICへの敏感さは限定的であること,(c) ICが主語にバイアスを生じさせるとき,英語での敏感さが下がることを特定した。この成果に基づき英語論文を執筆し,全国英語教育学会によるジャーナルARELE (Annual Review of English Language Education in Japan) に採択を得た。 後者について,上述の実験では実験材料に常に代名詞が含まれていたため,協力者に完成してもらった文の内容が,前の節の人物に関するものに限定されていたという問題点があった。この点を克服するために,代名詞を含まない材料による実験を行った。その結果は現在分析中である。
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