研究実績の概要 |
最終年度では,日本人英語学習者の潜在的因果性バイアスの利用に関する2つ目の実験を行い,その結果を論文として公表した。 前年度に実施した実験から,(a) 英語学習者も動詞の潜在的因果性バイアスを共参照処理に利用していること,ただし, (b) バイアスへの敏感さは,母語と比べると限定的であることを実証した。しかしながら,この実験で用いた英文には,指示対象が曖昧な代名詞が常に含まれており (Bob respected Ken because he, Mary telephoned Lisa because she), 観察された結果は,この曖昧な代名詞を解決する照応解析の必要性から引き起こされた可能性が残っていた。 この点について,学習者による潜在的因果性バイアスの利用が,照応解析の必要性から生じるのか,それとも,照応解析とは独立的に働く,予測的なプロセスなのかを検証する実証実験を行った。実験では,曖昧な代名詞を含まない英文 (e.g., Bob respected Ken because) の続きを,協力者に作成してもらった。結果,学習者は潜在的因果性バイアスを,照応解析の必要性が無い状況でも安定的に用いて文の続きを作成しており,潜在的因果性バイアスが照応解析から独立した認知プロセスであることが示された。 この結果を,全国英語教育学会による学術誌Annual Review of English Language Education in Japanに投稿し,採択を得た。
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