現在では,WEB上での地学領域におけるコンテンツが充実し,個々人が有しているパソコンやスマートフォン等から容易に多くの情報にアクセスできるようになっている.その中でも地形や地質についてのWEB上の有用な資料としては,国土地理院の「地理院地図」や産業技術総合研究所の「シームレス地質図」などが挙げられる.本研究では,これら「地理院地図」と「シームレス地質図」の両方を活用し,教室内でも簡単に実践可能な地形と地質について学べる教材を開発し,試行実践することを目的とした.本研究では,日本の生徒にとって最も身近な地形の1つであると考えられる「山」をテーマとした教材を作成し,地理院地図や地質図から得られた情報を総合して「山の成因」を考察することを目標とした.以下に課題内容の概要を示す. (1)「小牧山(愛知県)と大室山(静岡県)」の例:市街地に局地的に存在する高まりである小牧山と特徴的な円錐形を呈する小牧山を対象として,地形と地質の特徴からそれらの成因を考察させた.高校生と大学生を対象とした実践後の調査結果から,高校生の80%がオンラインマップを活用することで地形を立体的に捉えることができたと回答した.また,地質と地形を対比することによって,「なぜそこに山があるのか」という点について理解することができた. (2)「筑波山(茨城県)」の例:地形と地質の特徴から「筑波山は火山であるか否か」について考察させた.筑波山は,山体が深成岩から構成されることから,火成岩についての基礎的な知識を有していないと,「火山」と誤認してしまう可能性が高いことから,地図から得られた情報だけでなく,学習した知識を活用できるかも含めた課題とした.高校生を対象とした実践後の調査結果から,80%以上の生徒が学習の意義を感じたとともに,地理院地図の3D機能を用いることで地形を立体的に捉えることができた.
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