研究課題/領域番号 |
18H05784
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
山田 貴之 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (90824277)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 因果関係 / 見方・考え方 / 小学校理科 |
研究実績の概要 |
近年,知識基盤社会の進展に伴い,断片化された知識や技能ではなく,汎用的な資質・能力の育成が世界的な潮流となっており,我が国でも問題解決の力の育成がより一層求められるようになった。そこで本研究では,理科授業における問題解決の過程の初発に位置する仮説設定において,資質・能力を育成するための中核的な役割を担う因果関係の見方・考え方を働かせながら作業仮説を設定させる指導法を開発した。さらに,理科教科書に掲載されている全ての観察・実験等を対象に,因果関係の有無と発達段階の観点から開発した指導法の適用の適否を検討した。本研究は,学習指導要領で求められている資質・能力を育成するための指導法の開発が目的であり,理科授業の改善・充実を図っていくためのモデル研究でもある。 具体的には,まず,五十嵐(2016)と斎藤(2016)が,小林ら(2006),金子ら(2010,2011)および山田ら(2014)の研究を基に考案した仮説設定シート“The Two Question Strategy”に改善を加え,児童に因果関係がある自然事象から従属変数の変化の仕方と独立変数の変化のさせ方を捉えさせ,それらを関係付けることで,因果関係の見方・考え方を働かせながら作業仮説を設定させるワークシートを考案した。次に,2008年告示の学習指導要領に準拠した理科教科書主要5社に掲載されている全ての観察・実験等を対象に,開発した指導法の理科教科書に掲載されている全ての観察・実験等への適用の適否を検討した。 本研究では,2017年告示の学習指導要領に準拠した理科教科書主要5社を対象にしているが,初年度(2018年10月~2019年3月)においては,これらの教科書を入手することは困難であるため,2015年検定済みの理科教科書主要5社を対象に,開発した指導法がどの学年のどの学習内容に用いることが効果的であるのかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,児童の仮説設定能力を育成するための指導法の開発では,五十嵐(2016)と斎藤(2016)が,小林ら(2006),金子ら(2010,2011)および山田ら(2014)の研究を基に考案した仮説設定シート“The Two Question Strategy”に改善を加え,児童に因果関係がある自然事象から従属変数の変化の仕方と独立変数の変化のさせ方を捉えさせ,それらを関係付けることで,因果関係の見方・考え方を働かせながら作業仮説を設定させるワークシートを考案した。次に,開発した指導法の理科教科書に掲載されている全ての観察・実験等への適用の適否を検討した。 本研究では,2017年告示の学習指導要領に準拠した理科教科書主要5社を対象にしているが,初年度(2018年10月~2019年3月)においては,これらの教科書を入手することは困難であるため,2015年検定済みの理科教科書主要5社を対象に,開発した指導法がどの学年のどの学習内容に用いることが効果的であるのかを検討した(第3,4,6学年についての検討と整理まで終了)。 また,開発した指導法が児童の仮説設定能力に及ぼす効果について,A県内の公立B小学校第6学年2学級63名(実験群32名,統制群31名)を対象に予備調査を行った。その結果,開発した指導法を用いた実験群32名では,授業実践の前後において「独立変数の同定」,「独立変数の変化のさせ方」,「従属変数の同定」,「従属変数の変化の仕方」といった因果関係の見方・考え方を評価する各要素において一定の効果が認められた。併せて,「仮説と考察の書き方」に関する理解度についても,実験群の方が有意に高いことが認められた。さらに,本研究の基盤として,児童自身に因果関係を踏まえた仮説を設定させたり,仮説と実験結果を関連付けて考察させたりする指導法とその効果についても検討し,学術論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(2018年10月~2019年3月)において,2015年検定済みの理科教科書主要5社を対象に,開発した指導法がどの学年のどの学習内容に用いることが効果的であるのかを検討し,第3,4,6学年についての検討と整理まで終えている。そこで,今年度(2019年4月~2020年3月)は,まずは,2015年検定済みの第5学年における理科教科書主要5社を対象に,開発した指導法の効果について検討を行うこととする。次に,2017年告示の学習指導要領に準拠した理科教科書主要5社を入手でき次第,同様の手続きで検討と整理を進めていく予定である。 また,開発した指導法が児童の仮説設定能力に及ぼす効果について,【現在までの進捗状況】で述べた予備調査を踏まえ,調査対象児童数を増やしたり,第6学年以外の児童や複数の領域(エネルギー・粒子・生命・地球)を対象としたりするなど,具体的な授業実践を通して明らかにしていく予定である。さらに,授業実践の前後に調査問題を実施し,因果関係の見方・考え方を評価する4つの要素(「独立変数の同定」,「独立変数の変化のさせ方」,「従属変数の同定」,「従属変数の変化の仕方」)に及ぼす効果について検証する。併せて,「仮説と考察の書き方」に関する理解度の変容についても検証する。そして,これらの調査問題によって得られた結果を踏まえ,開発した指導法が有効に働く児童の発達段階や領域(エネルギー・粒子・生命・地球)について検討を加える予定である。
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