研究課題/領域番号 |
18H05785
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮島 新 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (00824971)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 同僚による教師支援 / 生活科 / 総合的学習 / 授業観 / 子供観 / 教師の自己更新 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,子供とのかかわりに悩む教師(以下「悩める教師」)が自ら成長し自信を得るための,同僚の支援方法を解明することである。この目的を遂行するため,本研究では「生活科・総合的な学習の時間」を主たる教育実践場面として,次の研究課題に取り組んでいる。①子供との関わりに悩む教師はどのような授業観や子供観をもっているのか。②子供の主体的・対話的で深い学びの姿が観察される時,教師はどのような授業観や子供観で子供と関わっているのか。③子供との関わりに悩む教師に対する同僚の効果的な支援が観察される場面には,どのような要素と条件が見出されるか。これらの研究課題について,現段階は事例を集め分析しているところである。 これまでの事例の中で特徴的なものは,次の4つである。①教師が授業において,どのように子どもの語りを聞いているのか,同僚が同じ題材を扱った授業場面を比較・分析することにより自身の傾向性を自覚していった事例,②児童と共に進めていった活動が「壁」にぶつかってしまったような状況で立ち止まっていたときに,その「壁」となっているもののとらえについて,同僚と語り合うことによってとらえ直しが起き,活動が深化していった事例,③子どもとの関わりに悩む教師の学級で,同僚が授業を行い,その授業での同僚と子どもとのやりとりを分析することで,本来「悩める教師」自身が大切にしようと感じていた授業観や子供観を再認識していった事例,④「悩める教師」と共に学級で飼育している動物(対象)の価値について語り合うなど,教材研究を共にすることで,その「悩める教師」にとっての授業の方向性を見出していった事例である。 いずれの事例からも,同僚のかかわりによって,「悩める教師」自身が本来大切にしたいと願っていた授業観や子供観が自覚化されていったことが伺える。今後さらに事例の収集・分析にあたっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を進めるにあたり,事例としてかかわっている実践が5件ある。そのうち,2件については,子供との活動自体が終了しているが,3件は活動自体が継続している状況にある。現在同僚として支援している「悩める教師」の授業実践は,担任している学級がそのまま進級しているため,今後も継続し事例の収集・分析を行う必要がある。中でも,2018年度は生活科で栽培活動を中心にしていた教師と子供たちが、進級し,今年度は動物飼育(ヤギ)に挑戦している状況がある。ヤギをめぐって教師と子供が共に悩み、考える日々を同僚という立場からどのような支援ができるのか考えていく。 子供との活動が終了している事例については,その教師の授業観や子供観の変容について,同僚(研究代表者)とのかかわりによるものだけでなく,実践を通しての長いスパンでの省察も分析し,教師の成長や学び,同僚による有効な支援方法についての具体に迫っていくことができるようにする。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進にあたっては,これまでに引き続き,「悩める教師」への同僚からの支援を継続していく予定である。さらに2019年度は本研究の最終年度であるため,「悩める教師」と共に,実践を振り返り,そこで示唆されたことを報告としてレポートにまとめていくことはもちろん,学会での発表を計画している。5月には,大分で行われる日本生活科・総合的学習教育学会で,主に栽培活動を中心とした事例の報告を,また9月には岡山で行われる教師教育学会において,教師が授業における子供の話の聞き方についての傾向性について自覚していった事例について報告する予定である。 いずれも,本研究推進にあたり,同僚(研究代表者)が実際に,その「悩める教師」との対話や教材研究などを通した支援にあたっている事例であり,今後さらに事例の整理・分析を進める必要がある。 また,本研究は「悩める教師」への直接的な支援だけでなく,同僚(研究代表者)自身の授業観や子供観を更新すべく,広く海外の教育実践に学ぶ機会を設けている。昨年度はスウェーデンの教育関係機関とイギリスの教育関係機関を視察し,それぞれの国の文化や地域の特性に根差した教育の在り方についての示唆を得たが,2019年度は前年度に引き続きスウェーデンでの教育関係機関への視察と,町をあげて芸術教育に力を入れているイタリアのレッジョエミリアへの視察を研修の機会として計画している。そのような海外の先進的な教育実践に触れ,そこでの申請者自身の学びが,同僚への支援にどのように生きてくるのか,分析していく。
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