本研究の学術的な「問い」は,「『悩める教師』が自ら成長し自信を得るために,同僚の支援はどのような要件を必要とするのか」ということであり,最も教師自身の授業観や子供観,さらには悩みが露わになってくる教科である生活科や総合的な学習の時間に焦点を当ててて研究を進めてきた。その結果,次の点が明らかになった。 ①子供との関わりに悩む教師の要因として,固定化された授業構想があげられる。その教師が想定していなかった子供の姿や言葉に直面した際に,それらの位置づけに戸惑い,「不都合なこと」となる。ここには「こうあらねばならない」というような硬直した授業観や子供観がある。②一方,子供が生き生きと学習活動に取り組んでいる学級・場面では,教師が当初思い描いた授業構想を,目の前の子どもの姿に応じて積極的に再構成しており,ここにはしなやかな授業観や子供観があることが確認された。③さらに,悩める教師への同僚の効果的な支援の可能性としては,悩みを抱えた教師の「悩み」を客観的に意味づけ,本人が「悩んでいること」自体を受け入れられるようにすることや,固定化され,直線で表されていた授業構想を,子供の姿に応じてウェビングマップ的に広がりのあるものとして,再構成していくことがあげられる。本研究を進める中で,こ「悩める教師」と支援者の対話的・協働的な思考を支えるツールとして,「三層のマップ」(宮島2019)の活用の可能性も見えてきた。本研究課題に関連して,日本生活科・総合的学習教育学会,日本教師教育学会等において研究発表を行った。
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