研究課題/領域番号 |
18H05786
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
町 岳 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80819293)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 算数科 / グループ学習 / 振り返り / 授業実践型相互教授 |
研究実績の概要 |
本研究では,小学校の算数科グループ学習において,授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in Classroom; 以下RTC; 町,2015)に,「自分たちの学び合いを振り返る意味や方法の提示」を行うことで,学び合いの過程重視の学習観を促進することの介入効果を検討する。RTCにより確認されている思考深化への効果(町・中谷, 2014)に,「主体的」という情意的側面への効果にも言及した具体的な方略を学校現場に提供することが目的である。 都内公立小学校3年生の児童を対象に,算数科「小数」の単元の授業を5時間行い,RTCの枠組みに基づき話し合いを行う群と,RTCに自分たちの学び合いを振り返る意味や方法の提示を加えた群の教授方略の効果を測定した(RTCの枠組みに基づき話し合いを行う群には,実践後に自分たちの学び合いを振り返る意味や方法についての授業を行った)。 自分たちの学び合いを振り返る視点として,「協力」,「聞き方」,「笑顔」,「質問」,「教え方」を提示し,グループ学習後に,振り返りカードを使って,自分たちの学習を振り返らせることとした。自分たちの学び合いについての自己効力感への効果を測定するために,先の視点に対応する,「協力」,「視点取得」,「配慮行動」,「援助要請」,「援助提供」の自己効力感5因子(各3項目)からなる質問紙を作成し調査した結果,「協力」,「配慮行動」,「援助要請」,「援助提供」の4因子について効果が確認された。このことは学び合いの振り返りの視点を,意図的に授業に組み入れることで,子供達が主体的に学び合う力が向上するという可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,研究協力の得られた都内公立小学校3年生の2クラスで,算数科「小数」の単元において,10月に授業実践を行なった。授業は問題解決型の授業展開を基本とし,集団解決場面でグループ学習を取り入れ,RTCの枠組みに基づき話し合いを行う群と,RTCに自分たちの学び合いを振り返る意味や方法の提示を加えた群の教授方略の効果を測定した。効果の測定は,学業達成度,質問紙,発話分析により行った。「研究実績の概要」で述べた質問質調査の結果は,令和元年9月の日本教育心理学会で発表する。現在,グループ学習の様子をビデオ(+集音マイク) により記録した資料の発話起こしを依頼している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の前半は,前年度にできなかったデータの分析を行う。まず学業達成度について,各回の学業達成度テストをルーブリックに基づき評価する。発話については,発話起こしの結果をプロトコルに整理し,カテゴリー分析や事例解釈的分析等により検討する。これらの分析を年度の前半をめどに終了させるとともに,それぞれの分析が終わった段階で,それぞれの研究成果を何らかの形で発信したい。また質問紙・学業達成度・発話それぞれの結果について,相互考察を加えた研究成果全体のまとめを年度後半に行いたい。
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