研究課題/領域番号 |
18H05788
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
中西 修一朗 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (50826071)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 総合学習 / 総合的な学習の時間 / カリキュラム / 梅根悟 / 教育制度検討委員会 |
研究実績の概要 |
申請者の研究の最終目的は、総合学習と教科との関係を、両者の往還の中で捉え直すような理論及び実践を明らかにすることにある。本年度は、交付申請書に記載した目的2および目的3に関連した研究を、本年度の研究実施計画に沿って行った。 教育制度検討委員会に関する議論をめぐっては、総合学習の教育方法と教育内容に関する議論の錯綜が明らかとなり、先行研究とは異なって当時の議論においては内容よりも方法に問題があったことが明らかとなった。これに関しては、教育目標・評価学会へ投稿していたものに関して、研究の経過を踏まえて査読修正を行い、『教育目標・評価学会紀要』28号に、「教育制度検討委員会のカリキュラム論の検討――総合学習の位置付けに焦点を合わせて――」として採録された。 また一方で、教育制度検討委員会から中央教育課程改革委員会へと続く総合学習をめぐる議論の中で、委員会の議長を務めた梅根悟のカリキュラム論を、総合学習を領域とみなすことに反対した城丸章夫の議論とも対比しながら検討した。重要なのは、総合学習のとらえ方が広狭入り混じっていたことと、技術科のとらえ方が変遷したことにあった。この研究の成果は、『京都大学大学院教育学研究科紀要』65号へと投稿し、査読を経て、「1970年代の総合学習の教育課程上の位置づけ――『教育課程改革試案』における技術科との関係に注目して――」として採録された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画においては、1970年代の一連の委員会をにおける総合学習の議論を、1950年代の問題解決学習論や梅根悟のカリキュラム論を通じて検討することを予期していた。この計画は、当初の予定通り達成された。加えて本年度には、当時の総合学習論が技術科と深い関係にあったこと、さらには同時期に進展しつつあった「学級文化活動」と深く結びついていたことが明らかとなってきた。特に後者についてはいまだ成果として発表するには至っていないものの、総合学習を通じてカリキュラムをとらえなおすという今後の研究を進展させるために、重要な視座を得ることができたと考えられる。以上より、(1)当初の計画以上に進展している、と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究により、1970年度に総合学習が提起された背景には、教育課程を「教科と教科外」と捉えるのではなく、「教科と総合学習」という形で捉える発想が隠されていたことが明らかとなってきた。この発想をとることで、1970年代においてすでに、子どもたちが課題を設定して探究的に学んでいく必要性を示唆することができたのである。この考え方は戦後新教育期に端を発するとともに、教育課程のあり方をも問い直す可能性をはらむものであったと言えよう。 一方で、この期の総合学習は、手を使った学習を通じて、子どもたちを労働や文化の世界とつなげていくことをも意識していた。学校現場の実践上の裏付けをもとにしたこの総合学習の一系譜が誕生した背景には、戦前からの生活教育の影響が読み取れる。戦前の戸塚廉の影響を受けた鈴木孝雄が学級づくりにおける「文化活動」の重要性に着目し、それが総合学習の一つとしても捉えられていた事実は、この関係性を端的に示している。 そこで本年度には、これまで重視してきた梅根悟も与する「生活教育」という視点を、戦前の議論もふまえて検討することで、総合学習が自ら探究を進めていくという知のあり方の側面と、活動を通じて文化を作りだしていくという側面をもつという多面性を含みこむことにな った回路を明らかにしたい。
|