本研究の目的は、南アフリカ共和国(以下、南ア)を事例として、ナショナル・カリキュラムとしての「共生教育」について教育社会学的観点から考察することである。 最終年度にあたる2019年度は、初年度に引き続き、文献研究を通じた「共生教育」の理論的検討と南アの「共生教育」を担う教科であるLife Orientationの制度的理念等の分析に取り組んだ(課題①)。加えて、教育行政側の視点から同教科の理念や教員研修における重点事項等(課題②)や、同教科を担う教員の教育観等および同教科の授業実践の様態等(課題③)を明らかにするために、南ア西ケープ州におけるフィールドワークを実施した。フィールドワークについては、2019年5月と8月に、南アの「共生教育」に関わる情報収集に加えて、西ケープ州教育省の行政官1名(5月と8月の両方で実施)と公立学校3校における教員計5名(内2名は5月と8月の両方で実施)へのインタヴュー調査ならびにLife Orientationの授業観察(計2回)を実施した。そして、最終年度にあたる今年度は、課題①から課題③までの成果を踏まえて、「共生教育」がナショナル・カリキュラムという「一つの基準」の下で営まれる際に「多様性の尊重」を確保するために重要となる要素を南アの事例から導き出すための考察を行った(課題④)。 また、今年度は、本研究のフィールドワークで得られたデータ(2019年5月に実施した教育省の行政官1名と公立学校3校における教員計4名へのインタヴュー調査等のデータに加えて、研究の初年度にあたる、2019年1月と3月に実施した教育省の行政官1名(1月と3月の両方で実施)と公立学校3校における教員計6名(内2名は1月と3月の両方で実施)へのインタヴュー調査等のデータ)の分析結果の一部を踏まえた研究の成果について、学会の大会(国際学会1箇所を含む3箇所)で報告した。
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