研究課題/領域番号 |
18H05793
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高田 俊輔 東洋大学, ライフデザイン学部, 助教 (20822969)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 教育と福祉 / 児童自立支援施設 / 感化・教護事業 / 非行少年 / 少年司法 |
研究実績の概要 |
近年、支援が必要な子どもたちの社会的自立のために、児童福祉施設と学校教育とが連携してケアに取り組む必要性が唱えられている。本研究は、非行少年を対象とする児童福祉制度から生じる「教育的なるもの」、「福祉的なるもの」とは何かという問いを探求することで、教育と児童福祉の「せめぎ合い」と「連携可能性」を明らかにする。具体的には、①「教育」と「福祉」それぞれの固有の論理がどのような歴史的な成立過程を経たのか、②どのように各々の実践家たちはその論理を受け継いできたのか、③現在の実践家たちは、どのように新たな教育と福祉の論理を生み出しているのかを明らかにすることを目指す。 本年度は、特に①について、児童自立支援施設の前身である感化院・教護院の実践家が中心に論考を執筆している『感化教育』と『児童保護』を分析した。そこから得られた最大の知見は、徴治監の改良として生まれた感化・保護教育が、学校教育や少年司法の動向を注視しつつ、「教育的であること」という言説を繰り返しながら自らの社会的意義を模索してきたということである。教育と福祉に関する思考が「能力」と「有用性」の枠組みから逃れることができない言説状況にある中で、私たちが教育を「能力を引き出す」ものであるとして解釈して教育と福祉の連携を考えようとしても費用対効果の点から非常に困難である。なぜなら、福祉の対象が「能力なき者」、「有用性のない者」として捉えられた場合、教育との連携対象としてみなされなくなってしまうからである。このような状況は、現代日本における福祉の状況とも重なる。果たして、現在目指されている教育と福祉の連携は可能であるのか。次年度は以上のような戦前における歴史研究の成果を活かしながら現代における教育と福祉の連携可能性について探求していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主に第二次世界大戦前における感化・教護事業に関する言説分析を行った。具体的には、『感化教育』および『児童保護』を中心に、感化・教護事業に携わっていた実践家たちの語りを分析対象とし、彼らがどのように教育的なるものを語っていたのかを考察した。本研究の成果をまとめたものは国内学会誌および北欧の児童福祉関係雑誌に論文投稿をし、現在査読中である。本年度は主に戦前における歴史研究を中心に進めていく予定であったため、戦前の主要な雑誌を分析することができたという意味では順調に進展しているといえる。 また、次年度からは児童自立支援施設における質的調査を行う予定であるが、すでに観察予定の施設へは複数回訪問をさせていただいており、次年度に向けた準備をすることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては、第二次世界大戦後における教育と福祉の連携状況について考察するために、雑誌『非行問題』を対象とする。1997年児童福祉法改正を経て、児童自立支援施設へは学校教育が導入されたわけであるが、そこでの児童福祉実践者たちがどのように教育を語っていたのかを考察する。 また、参与観察として児童自立支援施設における職員養成について考察し、児童福祉の理念がどのように伝承されていくのか、また理念を受け継いだ職員がどのように教育をとらえていくのかを考察する予定である。
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