本研究は「外国人受け入れ」のための日本語教育から「共に生きる社会」を作る日本語教育の構築へ向け、①「日本社会はどのような言語状況を目指すか」という言語政策理念研究と、②「多くの市民を取り込みつつ、言語政策レベルから言語教育の実践レベルまでを包括・一貫した施策はいかに可能か」という「言語政策実践研究」の2つを課題に挙げた。①は、政治学、政治哲学、哲学、倫理学など隣接領域の専門家を招き、月一回の勉強会・読書会を開催することにより、公共性、市民性概念を精査し、社会政策と言語教育との接点を探る方法をとった。②は移民に対する施策が政策から教育まで包括・一貫した施策を実践中の欧州評議会の事例を研究し社会における言語政策実践モデルを作成する方法をとった。 ①については、「言語政策理論基盤研究会」を発足させ、哲学、言語教育、市民性教育の専門家と、約月一回の研究会を開催した。2018年度は、2018年10月より、毎月一回、計7回実施した。この間、デカルト『省察』、ヒューム『人性論』、ライプニッツ『形而上学叙説』、カント『純粋理性批判』を講読。次年度以降講読するニーチェ、フッサールの基本的な基盤を固めた。2019年度の研究成果は言語文化教育研究学会で報告した。 ②については、欧州における複言語複文化主義を応用し、移民国家であるブラジルの日系コミュニティへの援用を考察することで研究を進めた。成果は学会、シンポジウムでの発表のほか、『早稲田日本語教育学』の特集として公開した。
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