研究課題/領域番号 |
19K20986
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福島 青史 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (90823724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 言語政策 / 複言語複文化主義 / 移民研究 |
研究実績の概要 |
本研究は「外国人受け入れ」のための日本語教育から「共に生きる社会」を作る日本語教育の構築へ向け、①「日本社会はどのような言語状況を目指すか」という言語政策理念研究と、②「多くの市民を取り込みつつ、言語政策レベルから言語教育の実践レベルまでを包括・一貫した施策はいかに可能か」という「言語政策実践研究」の2つを課題に挙げた。①は、政治学、政治哲学、哲学、倫理学など隣接領域の専門家を招き、月一回の勉強会・読書会を開催することにより、公共性、市民性概念を精査し、社会政策と言語教育との接点を探る方法をとった。②は移民に対する施策が政策から教育まで包括・一貫した施策を実践中の欧州評議会の事例を研究し社会における言語政策実践モデルを作成する方法をとった。 ①については、「言語政策理論基盤研究会」を発足させ、哲学、言語教育、市民性教育の専門家と研究会を開催した。2019年度も昨年度と同様に月に一回の頻度で開催し、2019年4月~2020年3月までの間に10回実施した。2019年度は、昨年度のデカルト、ライプニッツ、カントを基礎に、ニーチェ『権力への意思』、フッサール『イデーン』を講読し、「共に生きるため」の言語政策の基盤理論として現象学の基礎を固めた。研究成果は言語政策学会で報告する。 ②については、欧州における複言語複文化主義を応用し、移民国家であるブラジルの日系コミュニティへの援用を考察することで研究を進めた。成果は学会、シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究そのものは順調に進展している。ただ当初から想定はされていたことであるが、政治学、政治哲学、哲学、倫理学など他領域から、言語政策の理論を構築するのは容易なことではなく、より精緻な理論を構築することが求められている。 また、2020年の1月からは新型コロナウィルス感染症が拡大したことから、当初予定していた研究発表の場のいくつかを失ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
「言語政策理論基盤研究会」は、2020年度も継続しており、さらに、2020年度に採択された科研(2 0 K 0 0 7 0 9)でも、研究を継続する。内容としては、2018-2019年度が、言語政策理論の認識論研究を中心に行ったが、今後はより社会理論に結びつけ、より実践的な理論としていく。 研究発表の形式については、新型コロナウィルス感染症の状況をみて検討する。口頭発表を経て論文執筆をする流れを考えていたが、口頭発表ができない場合は、順序にはこだわらず研究成果を公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染の広がりにより、2019年3月アメリカ(ボストン)で参加を予定していた学会(AATJ 2020 Conference)がキャンセルになったため。 学会参加は現状では再開の見込みが立たないため、言語政策基盤理論研究会に経費として使用する。
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