研究実績の概要 |
本研究は、欧米を中心に研究が進む絵本論の知見を活かして多様な英語絵本を体系的に整理・分類し、実証的調査を通して、小学校英語教育における英語絵本活用のあり方を再考察・検証し、具体的な指導モデルの試案を構築することが目的である。 これまで、現行の小学校外国語教材及び補助教材を一次資料として概観し言語材料や文構造の分析を行うとともに指導方法や評価法について調査し、石川県内の公立小学校を中心として実際に行われる授業の参与観察と指導者へのインタビュー調査を実施してきた。 そうした教材把握や小学校現場の授業実践の現状把握を踏まえ、本年度はこれまでに整理してきた三種類の英語絵本(Real Books, Reading Schemes,外国語としての英語教育用教材絵本)について再度検証を行い、これらを用いた小学校外国語授業の指導モデルを考案、検証した。 各単元の指導目標である言語材料を習得するためのボトムアップとしての言語活動が主流の小学校外国語教育において、教科書から独立したひとときの遊びとしての絵本読み聞かせ(またはセルフリーディング)を通して、異文化や英語の音の楽しさを体験し、ことばの表す多層的な意味の世界の広がりを自由に想像・創造することが許容される絵本の活動は児童英語学習への動機づけを高めるものであり、同時に指導者側にとっても、単元学習で指導した言語知識をより意味のある文脈で提示したり、言及指示的機能を超えた言語の諸機能(交話的機能や詩的機能等)の存在を示したりできる教材として有用性が高いと考えられる。本研究では、そうした絵本を教育実践に取り入れるための絵本の選定基準や推奨作品を試案として提示し、指導の在り方を検証した。
|