研究課題/領域番号 |
19K20988
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
金南 咲季 椙山女学園大学, 人間関係学部, 講師 (80824979)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 外国人学校 / 地域コミュニティ / 類型論 / 比較社会学 / 多文化社会 / 教育課題 / 教育ネットワーク / 混合研究法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国内の外国人学校を対象に、「学校の基礎情報」と「地域との相互作用」について明らかにすることである。具体的には、1) 学校とその周辺地域との関係について質問紙調査をもとに全体像を描き出す、2) その結果をもとに選定した対象校に対して質的調査を行い、外国人学校と地域社会の関係構築過程を詳細に記述・分析する、3) 以上の知見を比較分析し、地域社会における「共生」の生成と展開の動態とその論理を説明する類型論を構築することを目指すものである。 2021年度は、昨年度までに実施した質問紙調査とインタビュー調査の分析を中心に作業を進めた。特に回答数が多く得られていたブラジル人学校のデータを中心に、学校が直面している教育課題を概観するとともに、「地域」との相互作用について分析を進めた。 その結果、学校間を跨いで運営や学校の法的地位、課外活動の充実をはじめとする共通課題がみられたほか、進路保障など学校によって違いが見られる項目や、アイデンティティ保障や政治的影響など、ほとんど課題として認識されていない項目があることも明らかになった。 また、学校と地域との交流の多寡や内実には違いが見られ、日本語・母語教育や学習支援、キャリア支援等の教育資源の充実に結実しているケースもあれば、地域の中で孤立している様子が伺われる学校もあることが示唆された。そこで、そのような分岐の背景にある要因を、対照的な位置づけにある2校のインタビューデータをもとに分析した。その結果、一側面としては、学校規模や経営の安定性、周辺地区の外国にルーツをもつ子どもの割合とそれに伴う地域主体の充実と課題意識の共有、活用できるネットワークの質(個人の私的なネットワーク/組織間の公的なネットワーク)と働きかけの双方向性、高校相当課程の有無とそれに伴う学校としての進路支援の程度や意識の違いが背景にあることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症に関する社会状況の影響により、2021年度に実施予定であったフィールド調査や対面でのインタビュー調査の実施が実現しなかったほか、対象校の教職員の業務も大幅に増加するなかで調査協力を得ることも難しくなっている側面があったため。そのため2021年度は、オンライン形式でのインタビュー調査を2件行うにとどまり、主にデータの分析に注力することとなった(具体的な成果と現状としては、質問紙調査ではデータを得られていなかった中華学校に対するインタビュー調査が他の研究者ネットワークを介して実現し、現在は学校種間を跨いだ比較分析を進めている)。 以上を理由として、本研究課題の延長申請を行い承認されたため、今後の計画も変更している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症に関する社会状況をみながら質的調査を中心に追加調査を進めていく予定である。下半期からはまとめの作業に入り、本研究課題を通じて得たデータの比較分析をもとに、地域社会における「共生」の生成と展開の動態、その背景論理を説明する類型論の構築に向けて作業を進め、論文にまとめる。なお、本研究の成果については随時広く発信する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に関する社会状況が想定以上に改善されず、実施予定であったフィールド調査や対面でのインタビュー調査の実施が困難となったことにより、旅費や文字起こし等に計上していた費用を支出する必要がなくなったため。2022年度は残額を、昨年度見合わせていた調査の実施にかかる旅費や文字起こし費用、データ分析に必要な文献資料や統計ソフトの購入費用、学会発表にかかる費用等に充当する予定である。
|