研究期間全体を通じて行った調査は、全国の外国(人)学校157校への質問紙調査(有効回答数46校、回収率29.3%)と計9校(南米系3校、中華系1校、朝鮮系1校、韓国系1校、インド系2校、英語系1校)への質的調査である。最終年度は主にデータの分析に取り組んだ。具体的には自由記述の分析や、多重対応分析を用いて対象校が抱える教育課題や、学校と地域の関係に着目した「社会空間」を構築し、その特徴を質的データと関連付けて分析した。 エスニシティ別の教育課題の特徴は回答校に限定される知見だが、英語系では課題と認識する項目数が相対的に少ないこと、南米系では「近隣地域との関係」は二分されていたこと、韓国系では「施設の老朽化・不足」「教職員の雇用」が共通に課題となっていたこと、朝鮮系では複数回答の総数が多く課題と認識している項目が多くみられ「政治的影響」を指摘する学校も多くみられたこと等が明らかになった。インド系は「学校の法的地位」や一部地域住民との軋轢やセグリゲート化の進行等の「近隣地域との関係」、移民背景をもたない日本人の入学希望が多いが現在は受け入れていないこと等の「教育ニーズへの対応」が課題に挙げられた。中華系からは、学校経営基盤に関わる課題が主に指摘された。具体的な交流内容について尋ねた自由記述からは、相互作用の内容は学校間交流に関するものが多く、「部活動の交流」「教職員間の交流・研修」「施設の貸し借り」等をはじめ9つに大別された。地域の周辺校との関係について多重対応分析を行ったところ、1軸(59.96%)と2軸(29.91%)はそれぞれ交流の多寡と交流の質として解釈され、1)周辺校とあまり接点のない学校、相対的に、2)国際交流協会や高校、大学、行政との間にも交流や相互理解が築かれている学校、3)小学校との交流を中心に子どもや教員同士が具体的に関わり合う学校、という分類が示唆された。
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