最終年度に実施した研究の目的は,昨年度の作成した瞑想の音声と作成したウェブサイトを用いて,オンラインによる慈悲瞑想の本格的な介入を行うことであった。申請期間中に心理療法の新たな枠組みとしてProcess-Based CBTが提唱されたことを受け,本研究でも治療の効果だけでなく,治療のプロセスや変数間のネットワークを重視することにした。 上記のように治療前後だけでなく,介入期間中の変数の変動も測定できるように,昨年度作成したウェブページを大幅に改良することにした。また,瞑想を行う度に回答してもらう尺度が,自己への優しさ,あるいはマインドフルネスを反映したものであるかどうかを検討するために,ウェブ調査を行った。 改良したウェブサイトと新しく作成した尺度を用いて6週間の介入研究を行った。参加者は大学生・大学院生37名であった。参加者は,毎週5回10~15分のマインドフルネスおよび慈悲の瞑想を行い,そのたびにアンケートに回答した。一週間ごとと介入の前後でも,マインドフルネス,セルフコンパッション,アウェアネスについて回答した。分析の結果,介入毎にメインアウトカムとした,マインドフルネス,セルフコンパッション,アウェアネスが向上したことが明らかとなった。また,瞑想の種類ごとに,気づきや自己への優しさの変化量が異なることが明らかとなった。 加えて,本研究で作成した瞑想の音声を用いて,うつ病を主症状とする休職者52名を対象に4週間の介入研究を行った(29名は統制群)。分析の結果,介入群は統制群と比べて,復職困難感が有意に低下し,社会適応度が有意に向上したことが明らかとなった。
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