2018年度は幼児が自分と同じような好みをもつ他者とそうでない他者とのどちらと関係性を構築したいと考えるかについて検討を行った。その内容は、幼児に事前に好きな食べ物や遊びなどについて聞き取りを行った。その後、実験者が操作する2体のパペットに対して、子どもは実験者のサポートを受けながらインタビューを行った。その際に、1体のパペットは完全に子どもと同じ好みである回答を行い、もう1体のパペットは子どもとは異なる好みの回答を行った。その後、次の遊びでどちらのパペットと続けて遊びたいかを子どもに質問した。その結果、多数の子どもが自分と同じ好みであるパペットと続けて遊びたいと回答した。この結果から、幼児期の子どもは自分の好みと同じである他者に対して関係性を構築・維持したいと考えるということが示唆された。本研究の意義としては、幼児が相手によって社会的なつながりを持とうとする動機に差があるということを明らかにした点があげられる。また、この知見は、教育現場等で友人づくりに困難を示す子どもたちの友だちづくりへのサポートに活かすことができると考えられる点で重要である。例えば、他の子どもの好みなどに明確にフォーカスをあてることで友人になりたいという動機を高められる可能性がある。また、大人が子どもに関わる際も、好みが同じであるということが重要なポイントとなる可能性がある。さらに、この研究は本研究課題の主目的である相手が属する集団によって他者の心の理解に影響があるかを検討するための予備実験としても重要である。本研究成果は日本発達心理学会第30回大会で発表しており、「発達研究」に掲載が決まっている。
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