研究課題/領域番号 |
19K21005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川島 朋也 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (70825851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚的注意 / 抑制 / 脳波 / 事象関連電位 / 視覚探索 |
研究実績の概要 |
ヒトの認知機能である視覚的注意は、複雑な視覚環境の中から不要な情報を抑制し、必要な情報を選択するうえで重要な役割を果たしている。妨害刺激の抑制プロセスについて、2020年度は主に下記の2点について成果を上げることができた。 1つ目の研究では、視覚探索において妨害刺激となる情報を無視手がかりとしてあらかじめ手がかり呈示することが抑制の処理にどのような影響を与えるかを脳波を指標として検討した。実験の結果、無視手がかりによって妨害刺激に対して抑制の指標であるPd成分が誘発されただけでなく、それに先行するN2pc成分は認められなかった。また、Pd成分の大きさと抑制の行動指標とのあいだに相関関係が認められた。このことから、無視手がかりを使って能動的に妨害刺激を抑制できることが示唆された。以上の研究成果は『認知心理学研究』に原著論文として掲載された。 2つ目の研究では、標的刺激の促進と妨害刺激の抑制が独立にはたらくとする先行研究の追試と拡張をオンライン実験で行った。視覚探索課題でシングルトンの有無を操作した。全試行の30%でランダムに提示されるプローブ課題によって、注意が標的刺激の色と妨害刺激の色にどの程度配分されるかを評価した。実験の結果、促進と抑制の効果のあいだには負の相関関係が認められ、両者は同時に使用されるというよりはむしろ、参加者のストラテジーによってその使われ方が異なる可能性が示唆された。以上の研究成果は基礎心理学会大会で発表した。なお、現在、これらの研究成果を国際的専門誌に投稿し、査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、脳波を用いて妨害刺激の能動的な抑制プロセスを検証した成果を学術雑誌で発表した。さらに、標的刺激の促進と妨害刺激の抑制の関係性について、従来報告されていた両者の独立性はむしろ参加者のストラテジーに依存する可能性を示唆する知見を得ており、成果を国際的専門誌に投稿した。そのため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行った心理学実験により、妨害刺激の抑制が機能するためにはいくつかの条件が必要であるという知見を得つつある。2021年度は、この知見をもとに実験パラダイムを吟味し、さらなるオンライン実験によって視覚的注意の制御機構の解明を進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大による研究計画変更に伴い、補助事業期間を再度延長する。次年度使用額については、オンライン心理実験の謝金、ならびに図書等に使用する予定である。
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