研究課題/領域番号 |
19K21008
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
吉原 将大 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70822956)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 音韻処理 / 形態処理 / 文字表記 / ストループ課題 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,人間の言語機能における音韻処理システムと形態処理システムの相互作用を検討することである。2020年度は当初,学習アプローチによる実験を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大のためデータ収集が困難であった。そこで,2019年度に実施したストループ課題の実験結果をまとめることに注力した。 先行研究では,ストループ課題における実験参加者には色の命名が求められるため,ディストラクターの文字表記は課題成績に影響を及ぼさないと考えられていた(Verdonschot & Kinoshita, 2018)。たとえば,Verdonschot & Kinoshita (2018)の実験3では,ディストラクターが漢字で書かれている場合と,ひらがなで書かれている場合の,両条件で有意なストループ効果が報告された。この結果は,色命名という音韻処理と,文字表記の認知という形態処理が独立であることを示すと考えられていた。しかし,先行研究では漢字とかな(カナ)の比較のみが行われており,それ以外の文字表記にも同様の結果が見られるかは明らかになっていなかった。 そこで本研究では,音韻処理と形態処理の相互作用について再検証するため,先行研究では未検証であったローマ字表記とカタカナ表記の比較を行った。実験の結果,ディストラクターがカタカナで書かれている場合とローマ字で書かれている場合とで,ストループ効果の有無は異なっていた。この結果は,ストループ課題が形態処理の影響を受けないという先行研究の結果に反するものであり,音韻処理と形態処理の両システム間に相互作用が存在することを示すものであった。これらの研究成果をまとめた論文は,Memory and Cognition誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り,2020年度は当初予定していた学習アプローチによる追加実験を行うことができなかった。そのため,学習アプローチによる研究成果のまとめも完了していない。そこで,研究計画をさらに延長し,2021年度も本研究を継続する必要が生じた。 以上より,当初予定していた追加実験を進められず計画に遅れが出ているものの,ストループ課題の実験結果は国際誌に掲載されたため,全体として進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,当初2020年度に予定していた学習アプローチによる新実験を実施し,データの収集に取り組む。具体的には,(2019年度の実験では設定していなかった)音韻情報のみに基づく学習群を設けることで,形態処理と音韻処理の相互作用がどのように生じるのかについて,さらなる検討を進める。新実験のデータ収集が完了し次第,学習アプローチによる実験結果をまとめて,国際誌に論文投稿を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,当初予定していた実験の遂行が困難であったため,次年度使用額が生じた。2021年度は,これらを原則として実験参加者への謝金と実験補助者への給与に充てる計画である。
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