研究課題/領域番号 |
19K21009
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
富田 望 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (30823364)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社交不安症 / 自己注目 / 自閉症スペクトラム / 観察者視点 / 現場視点 / 注意制御 |
研究実績の概要 |
社交不安症の維持要因については、観察者視点による自己注目、外的刺激への注意バイアス、注意制御機能の低下、注意の向け方に関するメタ認知的信念といった注意の問題が指摘されているが、各概念がどのような因果関係にあり、結果として社交不安症状の低下を引き起こすのかは不明確である。今年度は、前年度の研究成果に基づいて作成した注意のプロセスに関する作業仮説を検証するための一つの方法として、上記の変数を測定する縦断調査を実施した。 約800名を対象としたオンライン調査を実施し、1回目の調査を終了した。現時点では、今後の解析計画をたてるための予備的調査として、1回目のデータを用いて、社交不安症との併発が指摘されている自閉症スペクトラムの傾向と注意に関する各変数との関連性を検討した。 有効回答である640名の対象者を自閉症スペクトラムの傾向が高い群と低い群に振り分け、群ごとに注意に関する各変数と社交不安症状との相関分析を実施した。その結果、従来適応的な注意の向け方と考えられてきた「現場視点(観察者視点による自己注目の対照概念)」について、自閉症スペクトラム傾向高群のみにおいて社交不安症状と有意な正の相関を示した。したがって、自閉症スペクトラムの傾向は現場視点と社交不安症状の関連性を調整する効果を有しており、自閉症スペクトラムの程度が高い場合、現場視点の機能が変わる可能性が示唆された。以上より、今後の解析では、自閉症スペクトラムの程度を制御変数に入れた上で解析を進めていく必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オンラインでの調査研究は実施できたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた眼球情報、脳血流、心拍といった個体側の生理的な情報から自己注目を予測する方法を開発するための実験研究が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度からオンラインでの縦断調査を遂行中であり、次年度に2回目の調査を行う予定である。また、眼球情報、脳血流、心拍といった個体側の生理的な情報から自己注目を予測する方法を開発するための実験研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度に予定していた眼球情報、脳血流、心拍といった個体側の生理的な情報から自己注目を予測する方法を開発するための実験研究が実施できず、次年度に実施することとなったため。 研究では実験参加者の瞬目数、瞳孔径、スキャンパス(視線の移動距離)、心拍、脳活動を測定するため、主な使用計画としては、膨大な生理データを解析する研究補助者に対する人件費、実験参加者に対する謝礼、視線追跡装置や心拍計測を行う機械を購入する費用を考えている。
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