研究課題
本研究では,受検者の学力状態に関する診断を可能とする試験問題の作成を行うために,学力の達成度を表す記述文と受検者の典型的な誤答を利用する方法を用いる際の基礎的な事項に関する検討を行った。具体的には,測定しようとする学力についての認知モデルに基づき,試験問題の難易度に影響を及ぼすと考えられる要因を操作した場合に,確かにその要因によって試験問題の難易度が左右されているかどうかについて,検討を行った。なお,本研究では,英語文章読解問題を題材とした検討を行った。こうした検討を行うことにより,どの学力水準の受検者がどのような達成状況にあるかを把握でき,学力の達成度を表す記述文の作成に向けた重要な基礎資料となりうる。本研究の結果として,誤答選択肢に反映させた誤答の種類の違いが試験問題の難易度に大きな影響を及ぼしていたことが明らかとなった。具体的には,英語文章の要点把握の側面において,具体例を具体例のまま記述しているという特徴をもった誤答選択肢を含む問題は,他の問題に比べて難易度が高かった。また,同一の能力にアプローチする場合の問題形式の違いはそれに比べて影響力が大きくなかったことなどが明らかにされた。本研究の学術的意義は,試験問題の作成にあたって,測定したい学力に関連した認知プロセスの中に含まれている要因の操作によって,確かに受検者に求める学力水準が影響を受け,試験問題の難易度の高低が変動していたことを示したことである。この結果は,測定したい学力が試験問題の要求する能力水準に写し取られていたという点で,測定の妥当性(validity)を高めるものである。試験問題が要求する能力水準を実証的に検討した事例を提供したとともに,学力の達成度を表す記述文の作成にも活用できる知見である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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