本研究の目標は、なめらかな代数多様体上の階数1の層が対数的によい分岐をもつ場合に、対数的な特性サイクルが対数的な分岐の不変量により構成されていることをヒントとして、より一般かつ抽象的に定義された特性サイクルに分岐の不変量を用いた計算を与えることであった。 今年度は、代数多様体が3次元の場合に特性サイクルにおける閉ファイバーの重複度と分岐の不変量との関係を明らかにするということを目標にしていたが、年度内に目標を達成することはできなかった。一方、今年度は昨年度に比べて研究集会にも参加できるようになったため、昨年度までの成果を含む結果について研究集会で発表することができた。 研究機関全体としては、研究期間開始当初の方針ではうまくいかなかったり、途中で新型コロナウィルスの影響で計画が変更になったりはしたが、新たに有効な方針も見つかり、変更された計画の中、以下のような成果が得られた: (1) なめらかな代数多様体上の階数1の層に対して定まる対数的な特性サイクルを、対数的な余接束から自然な写像で余接束に引き戻すとき、引き戻しが代数的サイクルとして定まり、かつ、その引き戻しの台の基の余次元が2以下であれば、引き戻しは特性サイクルに一致する。 (2) 代数多様体の境界上の閉部分多様体に沿ったブローアップを許せば、対数的な分岐理論と非対数的な分岐理論を合わせたある条件のもとで、特性サイクルに分岐の不変量を用いた部分的な計算を与えることができる。
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