研究実績の概要 |
本年度はFano/Landau-Ginzburgミラー対称性の観点から, Fano多様体の同変変形に対応するLandau-Ginzburg模型の族を研究した. そして, Landau-Ginburg模型の族の周期が満たすべき微分差分方程式の構造やその解の漸近挙動を記述するStokes構造と呼ばれる構造の定式化を考察した. これは, 同変Dubrovin予想の定式化の観点や, 微分差分方程式に対する層理論的な新たなアプローチを与えるという意味で意義のあるものであると考える. ここで, 同変Dubrovin予想とは, Fano多様体が群作用を持つ場合のDubrovin予想の類似のことである. また, 対応するLandau-Ginzburg模型としては, 1次元の場合, すなわち, コンパクトRiemann面とその上の有理型関数の組を考えた. そして, この研究の概要を, トルコのガラタサライ大学で行われた超幾何微分方程式の研究集会「Monodromy and Hypergeometric Functions International Conference」において発表した. また, 前年度に得られた頂点作用素代数に関連する結果をプレプリントとしてarXiv上に発表し, いくつかの研究集会やセミナーで発表した. それ以前に発表していたDubrovin予想に関する結果が出版待ちの状態となり, 雑誌のweb上に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた第二段階までの理論を一度に構成するアイデアが生まれたので, どちらもまとめて一つの内容にすることにした. このため, 期待以上の対象について系統だった理論ができてきている一方で, いくつかの技術的な困難のため, 論文の執筆に予想以上の時間がかかっている. 結果として, 前年度に得られた結果をまとめたプレプリントをarXivに投稿したことや, 講演を行ったことの他に, 明確な形となる結果を出せなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
まずは得られた結果を論文としてまとめて発表する. 新たな概念を創出できたと考えているので, 発表後はこれらや関連する話題について研究を深めていきたい. 特に, 微差分方程式の形式分解やRiemann Hilbert対応, 今回の研究では, 0に収束する極限を考えたパラメータを有限の値で止めた場合にどのように理論を展開するか, 同変連接層の導来圏との関係を, どのように明確に定式化するかなどを考えていきたい.
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