研究課題/領域番号 |
18H05842
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 恒也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50733078)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 非エルミート系 / 強相関系 / トポロジカル物性 |
研究実績の概要 |
本研究では、強相関系において準粒子ダンピングに起因する非エルミート・トポロジカル物性を中心として強相関系で発現するトポロジカル物性を解析した。 準粒子ダンピングが誘起する非エルミートトポロジカル系の研究では、準粒子の寿命が重要である重い電子系において近藤効果がエクセプショナルポイントを誘起する事を局所ダイナミクスを厳密に扱える動的平均場理論を用いて解析した。また、ほとんどの重い電子系は結晶を成すが結晶の周期性によりエクセプショナルポイントが融合し、フェルミループが発現する事も明らかとした。また、この研究をさらに発展させ、対称性とエクセプショナルポイントが織りなす物理について強相関系を念頭に解析した。多くの強相関系は結晶を成すことから何らかの対称性を持っており、このサブテーマを取り組む際の格好の舞台になっている。解析の結果、カイラル対称性を持つ強相関系では、対称性によって守られたエクセプショナルリングやエクセプショナルトーラスが発現する事を明らかとした。また、上述の対称性とエクセプショナルポイントが織りなす物理は高い波及効果をもたらす。例えば量子系に限らず、ニュートン方程式に従う古典系でも同様の現象が見られる事を見出した。今後はこの方向での研究も視野に入れて解析を行いたい。 さらに、重い電子系の磁性相で発現するトポロジカル相の解析も行った。そこでは鏡映対称性によって守られたトポロジカルな状態がハーフメタル相に存在する事を明らかとした。また、トポロジカルポンプにおける強相関効果も解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で取り組む非エルミート現象の研究は始まったばかりであり、実際に研究を開始してみて、取り組むべき基礎的な問題が数多くあることが実感でき、昨年度も波及効果の大きい成果を挙げる事ができたと考えている。この事から、当初の計画以上に進展しているといえる。 特に、対称性とエクセプショナルポイントが織りなす物理に関しては強相関系に限らず、力学系、フォトニック結晶などでも発現する事が我々の研究の後、明らかとなった。特に、力学系においては系の詳細によらずニュートン方程式自体が持つ対称性からほぼ一般的に対称性に守られたエクセプショナルリングが発現する事が昨年度の研究で明らかとなった。この力学系特有の対称性も取り入れた解析は現在進行中であり、本年度の早い段階で成果を論文にまとめたいと考えている。また、本年度の研究から、非エルミート系においても対称性が非常に重要な役割を果たすことが明らかとなった。本年度は秩序相における解析と並行して、上述の観点からの研究を発展させ空間対称性とエクセプショナルポイントが織りなす物理に関しても取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究計画に挙げた課題である秩序相における非エルミート現象を解析する。特に超伝導相においてはエクセプショナルポイントに誘起された新しいマヨラナフェルミオンの発現機構が期待されるため磁性相も重要であるが、超伝導相を中心に解析を行いたい。この研究の遂行の際には前年度の解析で用いた動的平均場理論を適宜活用し、取り組みたい。 また、バルクで発現する非エルミートなトポロジカル励起が系の電磁場に対する応答にどの様に反映されるかを議論したい。動的平均場理論により得られたグリーン関数を活用して電磁場に対する線形応答の解析を足がかりとして研究に取り組みたい。なお、前年度の解析を受け空間対称性とエクセプショナルポイントが織りなす物理に関しても議論していきたい。このサブテーマに取り組む際にはクリフォード代数に基づく議論が有効であると考えられるが、昨年度に習得済みであるのでスムーズに研究が遂行できると期待している。
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