本研究では磁性体中を伝搬する磁気揺らぎの波「スピン波」の性質が、材料における空間反転対称性の破れ(鏡に映した際に元の姿と同じにならない性質)によってどのように変化するかについての理論的研究を行い、複数の新現象のメカニズムを解明した。当初計画したスピン波によって絶縁体中に電気分極を誘起する研究は未完成に終わったが、それに深く関連した強誘電基板(自発的に電気分極を持つ絶縁体)と磁性薄膜の多層系でスピン波が一方通行性を獲得したり伝播距離を大幅に向上したりする現象を新たに発見し、その理論的記述を確立する成果を得た。
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