研究実績の概要 |
本研究では、真空チャンバーおよびグラファイトをヒーターに用いるなど、外熱式ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置のセル構成を工夫することにより、実際の地球下部マントルに相当する高温高圧を発生させ、X線回折法や各種分光法と組み合わせることで、マントル物質の物性を詳らかにすることを目的として研究を実施してきた。研究代表者は、令和2年5月末まで海外における研究滞在のために1年半ほど本基金を中断・留保していたが、令和3年6月より現所属である岡山大学惑星物質研究所に着任したため、本研究を再開した。 当該の外熱式ダイヤモンドアンビルセルシステムを用い、ラボ実験および放射光を用いた実験で当初の目標である下部マントル温度圧力を発生させ、X線回折データおよびスペクトルデータを取得した。最近の密度汎関数法を用いた研究(Hermann and Mookherjee, 2016, PNAS)で、ブルーサイト、Mg(OH)2が下部マントル温度圧力領域で相転移を起こすことが予測されていた。外熱式ダイヤモンドアンビルセルシステムを用いた高温高圧実験の結果、予測されている新相の圧力領域よりも高い圧力にて、Mg(OH)2の低圧相由来でもなく、分解で生じるMgO由来の回折線でもない新しい回折線が観察された。得られたX線回折データを解析し、計算で予想されている新相との関係、含水鉱物の相図を再検討することで、マントル内部の水の循環についての考察を行い、論文としてまとめている。
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