研究課題/領域番号 |
18H05870
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
近藤 望 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (70824275)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | ジルコン晶出モデル / ソースマグマ / 希土類元素 / 分配係数 |
研究実績の概要 |
本年度は、珪酸塩マグマからのジルコン晶出(ジルコニウムの飽和)モデルの確立とジルコン-ケイ酸塩マグマ間での希土類元素分配係数の決定のため、ジルコンと珪酸塩メルトの反応実験の手法確立に取り組んだ。まず、地球の珪長質地殻から月の苦鉄質・珪長質までの幅広い組成範囲で、4種類の出発物質を酸化物・炭酸塩・水酸化物の粉末試薬から合成し、希土類元素を添加した。珪酸塩メルトからジルコンを晶出させ、化学分析に十分な大きさまで成長させるのは難しいため、本研究では天然のジルコンとケイ酸塩メルトを反応させ、愛媛大学理学部のピストンシリンダー高圧発生装置を用いて、この出発物質を高温・高圧条件下で全融解させ、天然のジルコン鉱物と反応させる手法をとった。この手法では、ジルコンからメルトへのジルコニウムや希土類元素の拡散プロファイルを得ることで、マグマのジルコニウムの飽和濃度やジルコン-ケイ酸塩メルト間分配係数を求める。天然のジルコン鉱物を用いてメルトとの反応実験から希土類元素の分配係数を決定するのは新しい試みであり、希土類元素を添加するのではなく、より天然の状況に近い希土類元素濃度で反応実験を行うことで、分配係数を正しく決定できると考えられる。天然のジルコンの粒内にはZr濃度や希土類元素組の濃度に不均質性があり、この不均質性を解消するために高温炉で長時間のアニーリングを行った。実験試料は京都大学理学部の電子線マイクロアナライザーを用いてジルコン、ケイ酸塩メルトの主成分・微量元素組成分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
天然ジルコンの使用には、Zr濃度や希土類元素濃度が不均質であることと、流体との反応といった変質作用により鉱物組織が破壊されているという2つの問題があった。この2つの問題は高温でのアニーリングによる元素の拡散と、組織の再結晶化で解決できるかと思われたが、アニーリングにより揮発しやすい微量元素(例えば鉛、ウラン)が結晶中から出て行くことで、結晶の破壊がさらに進むことになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、天然ジルコンに加え、人工ジルコンを合成してジルコンとケイ酸塩メルトの反応実験を行う。出発物質には酸化物、炭酸塩、水酸化物の粉末から合成した試料と天然あるいは合成のジルコン粒を用いる。実験装置は愛媛大学理学部のピストンシリンダー型高圧発生装置を用いる。実験の条件は圧力1GPa、温度1000~1300°C、酸素フガシティNi-NiOバッファーとし、この条件で合成粉末試料を全融解させてケイ酸塩メルトを作り、ジルコン粒と共存させ、平衡状態にする。実験回収試料中の急冷ガラス、ジルコン粒の主成分元素組成分析は京都大学理学部の波長分散型X線分光器付随の電子線マイクロアナライザーを用い、希土類元素組成分析は東京大学大気海洋研究所の二次電子イオン質量分析計を用いて行う。ジルコン粒からケイ酸塩メルトへのジルコニウムの拡散・溶解プロファイルを取り、ジルコンとメルト境界面におけるジルコニウム飽和濃度を算出する。さらに、愛媛大学理学部の常圧炉を用いてジルコニウムを添加したケイ酸塩ガラスを作成する。作成したケイ酸塩ガラスはラマン分光分析法やX線吸収法、X線回折法を用いて構造を分析・解析する。そして、得られたガラス(メルト)構造情報からケイ酸塩メルト中でのジルコニウムの配置とその他ケイ酸塩メルトを構成する元素の配置の関係を明らかにし、ジルコニウムの飽和・不飽和に関与する元素を決定する。これらの実験結果から、ジルコン晶出(ジルコニウム飽和)についてメルト組成・温度を変数としたモデルを構築する。このジルコン晶出モデルを用いて、申請者がこれまでに制約した冥王代地殻の組成範囲のうちでジルコンが晶出しうる組成を決定する。
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