研究実績の概要 |
マグマ中におけるZrの飽和(ジルコンの晶出)のメカニズムを明らかにするため、本年度はMgSiO3組成にZrを不飽和から飽和直前まで段階的に(0-15 wt.%)添加したメルト(マグマの組成を模した液体)からガラス(急冷メルト)を合成し、大型放射光施設SPring-8のBL04B2ビームラインにおいてX線動径分布関数測定によるガラスの構造解析を行なった。結果として、メルト中でZr濃度が飽和に近づくとともに、Si-Si結合距離の伸長とSi-Si結合数の変化、Zr-O距離の伸長が起こることがわかった。この結果から、Zr飽和(ジルコン晶出)のメカニズムはマグマ(メルト)中のSi-O-Siネットワーク構造と関係していると考えられる。そのため、今後メルトの主成分元素組成を変え、Si-O-Siネットワークの重合度を変化させた試料において、Zrに不飽和から飽和直前までのメルトの構造を分析することで、Zr飽和(ジルコン晶出)のメカニズム、特にそのマグマ組成依存性のメカニズムを解明できると考えられる。本研究の成果を受け、さらに研究を進めることで、これまで解明されてこなかったジルコン晶出の本質的なメカニズムを解明し、地球惑星科学分野の研究に大きく貢献できる可能性がある。 また、本年度はジルコン中のCe濃度から晶出現マグマのCe4+/Ce3+比を算出し、マグマの酸化還元状態を推定する手法にも着目した。最近の研究では、マグマのCe4+/Ce3+比はマグマの酸化還元状態だけでなくマグマの構造にも依存する可能性が示唆されていたため、一般的にジルコンがよく晶出する含水流紋岩質マグマにCeを0, 0.5, 1 wt.%添加したガラスの構造分析(X線動径分布関数測定、ラマン分光分析)を行なった。結果として、メルト中の(Si, Al)-OH構造とCeが反応してCeの価数変化が起きている可能性があることがわかった。
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