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2018 年度 実績報告書

イシサンゴの有機無機プロセスを統合する骨格形成様式の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H05871
配分区分補助金
研究機関琉球大学

研究代表者

千徳 明日香  琉球大学, 理学部, 助教 (00722802)

研究期間 (年度) 2018-08-24 – 2020-03-31
キーワード無藻性イシサンゴ / バイオミネラリゼーション / 骨格形成 / 成長形態 / 微細構造 / 群体 / 無性生殖
研究実績の概要

本研究の初年度は,南西諸島を中心とした水深100~400mの生息場の調査やサンプリング(ドレッジ,採泥調査)を行うため,産総研,広島大学,三重大学の航海調査に参加し,数多くの無藻性イシサンゴの生体および骨格標本を採集した.採集した生体サンゴは一部をDNA,RNA採収用に固定し,残りは水槽において継続して飼育している.
骨格分析に関してはオーストラリアのタスマニア海山周辺の水深1700mの深海サンゴ礁に生息する深海性イシサンゴを用い,サンゴの骨格形成様式,特に成長形態の変異の研究を進めた.これまで当該サンゴは単体として扱われてきたが,そのためひとつの個体から出芽が起こっている場合は一斉出芽などの不規則な出芽が起こった「偽群体」とされた.しかし,同一地点から得られた450個体以上の標本観察を行った結果,少なくても76%は骨格に出芽痕が残されており,2-4世代の群体形成がなされている.実際に出芽部位の検証を行うと特定の原隔壁と呼ばれる12か所からの顕著な出芽が認められた.このような出芽部位の限定は科の異なるキサンゴ科やビワガライシ科の複数のサンゴ種においても知られており,遺伝的な制約を示唆する.
出芽部位の観察では適した部位で断面や薄片を作成し,実体顕微鏡,偏光顕微鏡,SEM, EDXなどを用いて詳細に観察した.その結果,骨格表面にはマンガンなどの鉱物が被覆し黒く骨格が変色している.しかし,初生個体(原隔壁)と親個体間の微細構造の関係を観察すると,粒状結晶と繊維状結晶の存在様式が同じであり,両間に他の物質による明瞭な境界がないことが認められた.これらの結果は,当該サンゴがは二次的に幼生が付着した偽群体ではなく,環境に応じて群体を形成する高い形態学的可塑性を有し, corallum型すなわち, 単体または群体が深海イシサンゴ類において頑丈な分類形質ではない可能性を示唆している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では,平成30年度には各種分析や解析に必要な実験室の設備環境を拡充させ,その後に飼育実験及び時間生物学的方法(生体リズム解析)・古生物学的方法(マーカー添加)を進める計画であった.しかし研究室に設備を設置する際に,各部屋の電力不足などが発覚し,水槽設置や研究機器の設置,運転などが速やかに行えない状況であった.そのため間接経費を用いて電気工事などを行った.そのため,平成30年度には,実験室の設備環境を整えることに多くの時間を必要とし,当初計画に掲げている分析の進展がやや遅れている状況である.
しかし,研究代表者の既存データや研究協力者の予察データ等を用いて,サンゴ骨格の続成作用を踏まえた骨格微細構造解析と,マクロな形態解析を組み合わせた研究手法により,サンゴ骨格の形成様式の解明ついて考察を深めることができた.そのため,ここでは「(3)やや遅れている」の区分を選択した.

今後の研究の推進方策

本研究実績報告書の「現在までの進捗状況」でも述べた通り,当初の計画と比べて進捗がやや遅れている.今後は,実験室の設備環境をさらに拡充しつつ,併せて飼育実験を進め,分子生物学的手法(遺伝子解析)の分析や解析を順次進めていく必要がある.従って,申請書段階の平成31年度の計画にとらわれすぎることなく,実験室の現状に合わせて,可能な分析から順次行っていくという方針で研究を進める予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] The University of Queensland(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      The University of Queensland
  • [雑誌論文] Modes of regeneration and adaptation to soft-bottom substrates of the free-living solitary scleractinian Deltocyathoides orientalis2018

    • 著者名/発表者名
      Sentoku, A., Tokuda, Y., Ezaki,Y., and Webb, G. E.
    • 雑誌名

      Lethaia

      巻: 51 (2) ページ: 102-111

    • DOI

      https://doi.org/10.1111/let.12228

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A new cryptic species of Asteronyx Mullerand Troschel, 1842 (Echinodermata: Ophiuroidea), based on molecular phylogeny and morphology, from off Pacific Coast of Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Okanishi, M., Sentoku, A., Martynov, A., Fujita, T.
    • 雑誌名

      Zoologischer Anzeiger

      巻: 274 ページ: 14-33

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.jcz.2018.03.001

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Truncatoflabellum gardineri骨格に認められる破損・修復痕を用いた沖合軟底質上でのイシサンゴの捕食圧の解明2018

    • 著者名/発表者名
      徳田悠希,石黒泰弘,江崎洋一,千徳明日香
    • 学会等名
      日本古生物学会2018年年会
  • [学会発表] 深海性イシサンゴの無性生殖様式と微細構造観察2018

    • 著者名/発表者名
      千徳明日香,徳田悠希,Gregory E. Webb
    • 学会等名
      日本地質学会第125年学術学会
  • [学会発表] 深海性イシサンゴDesmophyllum dianthusの無性生殖による増殖様式2018

    • 著者名/発表者名
      千徳明日香,G. E. Webb,徳田悠希
    • 学会等名
      日本動物学会 第89回大会
  • [学会発表] 南西諸島周辺の表層~中深層における無藻性イシサンゴの分布と多様性の解明2018

    • 著者名/発表者名
      千徳明日香
    • 学会等名
      平成30年度公益信託「エスペック地球環境研究・技術基金」授与式
    • 招待講演
  • [学会発表] 山陰沖の日本海における無藻性イシサンゴの構成と分布2018

    • 著者名/発表者名
      同前 万由子,徳田 悠希,江崎 洋一,千徳 明日香,鈴木 淳,池原 研,片山 肇,板木 拓也
    • 学会等名
      日本サンゴ礁学会 第21回大会
  • [学会発表] タスマニア海山の深海性イシサンゴにおける骨格形態形成様式2018

    • 著者名/発表者名
      千徳明日香,徳田悠希,Gregory E Webb
    • 学会等名
      東京大学大気海洋研究所研究シンポジウム「バイオミネラリゼーションと石灰化」,第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 招待講演
  • [図書] 海底に潜るイシサンゴ2018

    • 著者名/発表者名
      千徳明日香,徳田悠希(分担執筆)
    • 総ページ数
      35
    • 出版者
      国立科学博物館 自然と科学の情報誌milsil(ミルシル)Vol.11 (1), 15-16
  • [図書] 白浜海岸生物観察ガイド2018

    • 著者名/発表者名
      朝倉彰(監修)河村真理子(編集・執筆)千徳明日香ほか10名(分担執筆)
    • 総ページ数
      94
    • 出版者
      京都大学瀬戸臨海実験所・白浜水族館

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公開日: 2019-12-27  

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