研究実績の概要 |
サンゴ骨格中に記録された成長線及び同位体・微量元素変動や,それらの周期性は古環境復元の重要な指標となっている.しかし,環境情報が如何に骨格中に保存されるのかといった,ナノ~ミクロレベルでの骨格形成の詳細はいまだ明らかになっていない. 今年度はサンゴの生体と骨格を用いた学際的研究により詳細な「骨格形成様式」の解明を進めるため,遺伝子解析(時計遺伝子の確認)と無性生殖における骨格形成様式の解明に力点を置いた. 無藻性単体イシサンゴの軟体部の膨張・収縮を様々に組合せた明暗の外的光条件への呼応をモニタリングし,χ2乗ピリオドグラム法によって周期性を解析した結果,当該サンゴは,明確に光に応答していることが判明した.全暗条件下でも周期性を示すことから,時計遺伝子の存在が示唆される.リアルタイムPCR装置を用い,遺伝子解析を行った結果,複数の時計遺伝子(cycle,cryptochrome)の存在を確認した.確認された時計遺伝子を用い「各遺伝子の発現パターン」の解析を進めている. 無性生殖における骨格形成様式に関しては,深海性単体サンゴ骨格の実体顕微鏡,偏光顕微鏡,SEM, EDXなどを用いて詳細に観察した.その結果,骨格表面にはマンガンなどの鉱物が被覆が認められ,これらを用いた骨格形成の成長速度の解析を目指している.
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