研究課題/領域番号 |
19K21059
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
大場 崇義 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (10824443)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽 / 偏光 / 分光 / 対流 / 画像解析 / 磁場 |
研究実績の概要 |
本研究は、太陽観測衛星「ひので」が取得する偏光分光観測データを用いて、磁気流体波の駆動機構を同定することを目指したものである。昨年度において、微細スケールで生じている磁気流体波動を捉えるため、望遠鏡・観測機器の結像性能を補正するアルゴリズムを開発した。一方、本年度において、開発した結像性能補正技術は、解析で取り扱う観測データの要素数(画素数)では計算コストが莫大となり、実用的に使用することができない問題が発覚した。そこで、アルゴリズムの計算処理方法を見直し、最適化することで計算速度を約70倍改善することに成功した。これにより、膨大な要素数の画像データに対しても適用可能なアルゴリズムを得ることができた。また、本結像性能補正技術によって空間分解能を改善した偏光分光観測データの解析を進めた。偏光分光プロファイルは、大気の物理状態(温度・速度・磁場)に応じて変形しているため、輻射輸送方程式の逆問題解法によってそれらの物理量を抽出することが可能である。本研究では、ドイツ/マックス・プランク研究所において開発された「輻射輸送方程式の逆問題解法コード(SPINOR)」を採用した。そこで、マックス・プランク研究所に滞在し、輻射輸送計算コードについて第一線の研究実績を有するRiethmueller氏・Solanki氏と共同研究を実施した。結像性能補正技術によって取得した偏光分光プロファイルに対し、SPINORコードを用いて太陽表面大気の物理量を診断したところ、2,000[G]程度の強い磁場領域が至るところに存在することを示した。また、磁場強度のヒストグラムを解析したところ、0[G]と1,500[G]において2つのピークを持つ特徴的な磁場強度分布が得られた。これらは、これまで捉えられなかった微細な磁場構造が、本研究で開発した結像性能補正技術により得られたことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結像性能補正技術のアルゴリズム開発は終えていたが、実際の観測データに適用した際に計算コストが膨大で実用的に使用できない問題が発覚した。アルゴリズムの計算方法の見直しに時間を費やしたため、当初の目的としていたサイエンス成果の創出まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において、結像性能補正技術から得られた高解像度な偏光分光観測データから、磁気大気の微細構造を抽出することに成功した。これらは、先行研究で報告されていた磁場強度分布と異なる傾向を示していた。そこでまず、強磁場領域の空間分布と周辺対流速度場を詳細に解析することで、特徴的な磁場強度分布を生成した物理的要因を解釈する。その後、本研究課題でターゲットとしていた「磁気大気の時間発展」を解析することで、磁気流体波動駆動の証拠を捉えることを目指す。
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