研究課題/領域番号 |
18H05883
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 勇士 東北大学, 工学研究科, 助教 (50828788)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / 超小型衛星 / 金属燃焼 / ハイブリッドロケット / テルミット反応 |
研究実績の概要 |
超小型衛星の多機能化および深宇宙探査には,推進機がますます不可欠な存在となる.高度なミッションには多様な推進能力が求められる.その中で,無毒で安全かつデブリ回避・軌道投入に必要な高速マヌーバを実現する大推力推進機として,金属/水ハイブリッドスラスタが提案されている.これまでの金属/水ハイブリットスラスタの研究は,アルミニウムおよびマグネシウムを対象として行われてきたが,いずれも水素発生器あるいは打ち上げ用ロケットを想定している.したがって,すべての研究は高圧かつ金属粉体燃料を設定しており,宇宙空間を想定した低圧下および非粉体金属燃料での本反応を利用したスラスタ研究は行われていない.本研究では,金属/水を用いたハイブリッド超小型衛星用スラスタの宇宙作動実証を目指し,金属/水―反応系の燃焼機構の解明を行うことを目標として研究を進めている.本申請対象となる課題の解決のために2つの小テーマに細分化し研究計画を立てた. ①「燃料後退速度の燃焼室圧力および混合比依存性の解明」:複数回の燃焼実験より,燃料後退速度の燃焼室圧力および混合比依存性を解明する;②「燃料後退モデルによる支配機構の解明」:固体ロケットで簡易的に用いられている粒状拡散火炎モデルを参考に燃料後退モデルを構築する.燃焼実験結果とモデルによる解析結果の比較により、本方式ハイブリッドスラスタの支配的な反応メカニズムを明らかにする. ①および②を遂行するために,まずは金属を簡易的に加熱でき,かつ,宇宙空間で確実に点火できる方法について検討した.文献調査を踏まえて本研究では,酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウム粉末のテルミット反応に着目し真空下での反応実験を行った.20 Pa 程度の減圧下でのテルミット反応を確認した一方で,大気圧下とは異なり著しく弱い反応を観測し,宇宙空間でのテルミット反応を利用した点火手法の難しさを本研究より明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
10月に研究課題採択を受けたが,1月の研究拠点変更に伴い,主に実験から構成される本研究は進捗がやや遅れている.また,金属燃料表面に有する酸化被膜を溶融させるのは通常のロケット燃料と比較すると難しく,金属/水の反応を開始することができていない.1月から3月までの期間を新年度に向けての準備期間として当該分野の主要な研究者との綿密な議論を行い,本研究課題の解決に向けた有益な方策を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
酸化被膜を有する金属表面を溶融・蒸発させ,水との金属燃焼を開始させるのが,本研究の肝である.そこで,新年度では化学燃焼を用いて,金属を加熱することとする.金属燃料は燃焼器内に挿入され,炭化水素系燃料とガス酸素の燃焼ガスによって高温状態に晒される.その後,バルブ操作によってガス酸素供給から液体水供給を開始させる.これらの燃焼実験を実施し,燃料後退速度の燃焼室圧力および混合比依存性を解明する.また,燃焼実験結果と燃焼モデルによる解析結果の比較により、本方式ハイブリッドスラスタの支配的な反応メカニズムを明らかにする.
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