研究課題/領域番号 |
18H05892
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡 智絵美 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70823285)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気特性評価 / 磁性ナノ粒子の発熱特性 |
研究実績の概要 |
集積可能なマイクロアクチュエータでは,配線やエネルギ供給の容易さから,無配線・遠隔制御できるものが有利である.本研究では,磁性ナノ粒子の交流磁場中における発熱を駆動源とした,新規交流磁場応答アクチュエータを提案する.本研究の目的は,この無配線・遠隔制御可能な交流磁場応答アクチュエータ群開発に向けた基礎研究である.2018年度は,①磁性ナノ粒子のサイズ・凝集状態の異なるナノ粒子分散水溶液の調製,②磁性ナノ粒子分散水溶液の交流磁化率測定,③磁性ナノ粒子の発熱量評価システムの設計の3点に取り組む計画を立てた. ①磁性ナノ粒子のサイズ・凝集状態の異なるナノ粒子分散水溶液の調製:共沈法を用い,平均粒子サイズ 5 nm-26 nmの様々な磁性酸化鉄ナノ粒子分散水溶液の調製に成功した.粒子合成条件により,平均粒子サイズおよび粒子サイズ分布が変化することを明らかにした. ②磁性ナノ粒子分散水溶液の交流磁化率測定:平均粒子サイズの異なる3種の磁性酸化鉄ナノ粒子分散水溶液の測定を行った.粒子サイズの多分散性により,交流磁化率温度依存性の明確なピークは得られず,粒子サイズのより均一な磁性ナノ粒子を得る必要があることがわかった.また,おおまかに確認できた交流磁化率温度依存性のピーク位置から,磁性ナノ粒子の結晶子径から算出される理論計算値と実験で得られるピーク値が異なることが見出された. ③磁性ナノ粒子の発熱量評価システムの設計:最大磁場強度100 Oe,交流磁場周波数600 kHz-2 MHzの交流磁場を発生できるシステムの設計と構築を行った.さらに,磁性ナノ粒子の発熱量評価も行い,熱応答性ゲルと磁性ナノ粒子を組み合わせたアクチュエータが実現可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①磁性ナノ粒子のサイズ・凝集状態の異なるナノ粒子分散水溶液の調製および②磁性ナノ粒子分散水溶液の交流磁化率測定では,合成した磁性ナノ粒子の粒子サイズが多分散であったことから,凝集状態の制御および交流磁化率ピーク値の獲得には至らなかった.しかし,単分散磁性ナノ粒子の合成を実施する方針を定めることができ,また,交流磁化率温度依存性のピーク値が理論計算値と実験値で異なるという新たな知見を得ることができた.③磁性ナノ粒子の発熱量評価システムの設計では,設計だけでなくシステム構築と発熱量の実測まで達成でき,計画以上の成果が得られた.2019年度利用する共用装置利用環境も整備できたため,「おおむね順調に進展している。」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
無配線・遠隔制御可能な交流磁場応答アクチュエータ群開発の基礎研究として今後は,オレイン酸鉄錯体の熱分解法による磁性酸化鉄ナノ粒子の合成を行い,交流磁場中での発熱量評価を行う.また,磁性酸化鉄ナノ粒子と熱応答性ゲルを複合化したアクチュエータ群の試作を行い,無配線・遠隔制御可能な交流磁場応答アクチュエータ群の実現に向けた検討に取り組む. より粒子サイズの均一な磁性ナノ粒子を得る必要があることがわかったため,オレイン酸鉄錯体の熱分解法による磁性酸化鉄ナノ粒子合成を実施し,交流磁場中での発熱量と交流磁場周波数の関係について調査する.そして,交流磁場周波数に対する発熱量のピーク位置が異なる磁性酸化鉄ナノ粒子を選び,熱応答性ゲルと組合せたアクチュエータを複数個作製する.印加する交流磁場の周波数を変えることで,複数のアクチュエータを1つのコイルで個々に収縮制御可能とする条件を調査し,目的とするアクチュエータ群実現に向けた検討を行う.
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