本研究では,磁性ナノ粒子の発熱量と交流磁場周波数の関係を解明し,磁性ナノ粒子のサイズ,凝集状態および磁化率との関係を明らかにすること,そして,無配線・遠隔制御可能な交流磁場応答アクチュエータ群実現に向けた基礎検討を行うことを当初の目的とし研究に取り組んだ. 前年度の2018年度は,①磁性ナノ粒子のサイズ・凝集状態の異なるナノ粒子分散水溶液の調製,②磁性ナノ粒子分散水溶液の交流磁化率測定,③磁性ナノ粒子の発熱量評価システムの設計の3点に取り組み,合成した磁性ナノ粒子の発熱量評価を実施した.最終年度の2019年度は,④発熱量と交流磁場周波数の関係の解明,⑤アクチュエータ群の実現に向けた検討の2つに取り組む予定だったが,研究の進行具合の都合,⑤アクチュエータ群の実現に向けた検討にのみ重点的に取り組んだ. ⑤アクチュエータ群の実現に向けた検討では,熱応答性ゲルと磁性ナノ粒子からなる交流磁場応答マイクロバルブの基礎研究を実施した.具体的には,マイクロバルブ作製プロセスを確立し,マイクロバルブの試作を行った.そして,③磁性ナノ粒子の発熱量評価システムの設計で作製した磁場印加システムを用い,交流磁場印加によるマイクロバルブの遠隔開閉駆動試験を実施した.その結果,マイクロバルブが交流磁場印加により実際に駆動することを確認した.今後更なる検討が必要ではあるが,本研究により無配線・遠隔制御可能な新規マイクロバルブの実現可能性が確認できた. 引き続き研究を進めていき,複数のマイクロバルブを個別制御できるような作製条件を探索することにより,無配線・遠隔制御可能な交流磁場応答アクチュエータ群が実現可能だと期待する.
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