研究課題/領域番号 |
18H05902
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 亘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60823888)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 制御器自動設計 / データ駆動型制御 / 自己共振相殺制御 / 最適化 / 複数入出力系 / ノンコロケート系 / 非最小位相系 |
研究実績の概要 |
本研究では,周波数応答データを用いたロボットや位置決めステージの制御器の自動設計を目標とする。近年,高分解能エンコーダの低下価格化に伴い,駆動側だけでなく負荷側にもセンサがつけられるフルクローズド制御が普及しつつある。ところが,1入力1出力系から多入力多出力系になると制御器が複雑になりチューニングパラメタが増えるため,組み合わせ爆発を起こす。そのため,単純な制御器を用いるか,熟練の作業員が経験的にチューニングすることが一般的である。そこで本研究では,1) パラメトリックモデルを用いない,周波数応答データを用いた制御器自動設計法の提案,2) 周波数応答データを用いた高性能なフィードフォワード制御器の提案,を目標とする。
2018年度は,1) 1入力2出力系に対する制御器の制御器の自動設計法を提案した。コロケート側(モータ側)エンコーダと,ノンコロケート側(ステージ側)エンコーダの双方を使う「自己共振相殺制御」をインナーの速度制御ループに持ち,アウターループに位置制御ループを持つ構成である。この構成はチューニングパラメタに対して非凸であるが,逐次線形化法と非線形最適化法を使用することにより,外乱抑圧性能が優れる制御器を自動設計することに成功した。提案手法の有効性は実機を用いた実験により示された。2) フィードフォワード制御器設計について,不安定零点がある系に対するフィードフォワード制御法の提案・実験検証を行った。センサとアクチュエータが離れているようなノンコロケート系では,系が不安定零点を持つことがある。理想的なフィードフォワード制御器は逆系であるが,不安定零点の逆系は不安定極となり,実装することができない。これに対し,PreactuationとMultirate feedforwardを用いた安定逆系を構成する手法を提案し,追従誤差が劇的に減少することを実験により示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) については,理論の提案,解析,実機実装,実験を行い,有用性を示し,成果を国内会議において発表した。この成果により,工作機械などの位置決め装置でますます一般的になっている,IoTによる多センサ化の流れにおいて,複数センサを有効に活用する制御則の実現が近づいたといえる。本制御法は,従来の$H_\infty$制御の枠組みと異なり,制御器の構造を指定できるという利点がある。つまり,PID制御やP-PI制御といった,産業界において一般的なサーボドライバの制御アルゴリズムにおいて,ソフトウェア構造の変更なしに実装可能である利点がある。対外発表をした際には,産業界から有用であるとの反響を多数いただいた。
2) については,実験検証を行った成果が論文誌掲載に至った。この成果は,Frequency Domain System Identificationの技術を用いて得た高品質の周波数応答データを用い,ノイズの分散を考慮したアルゴリズムにより得られた,精密な1入力2出力モデルを用いたものである。対となる Time Domain Identification で用いられることが多いランダムノイズやChirp sineの入力信号でなく,Multi sineを用いて同定を行うことが特色である。離散的な周波数スペクトルを細かく調整できるこの手法により,高品質な周波数応答データを得ることができる。得られたモデルを元に,提案したPreactuation Perfect Tracking Controlを,連続時間不安定零点を持つシステムに適用した。本手法は,非最小位相系である,HDD,精密位置決めステージ,自動車,航空機などに有効な手法である。
以上より,研究は当初の計画以上に進展していると結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
1) 周波数応答データを用いたフィードバック制御器自動設計法については,更に複雑な制御器構造の最適化設計を今後取り組む。例えば,外乱オブザーバやノッチフィルタ,位相進み遅れフィルタを含んだより高次の制御器の周波数応答データを用いた自動設計法を検討していく。さらに,複数入出力を持つような位置決め装置の設計製作を計画している。実際の産業機械に対しても,産学連携を通して実装していく計画である。
2) 周波数応答データを用いた高性能なフィードフォワード制御器の提案については,有限時間・最短時間 Preactuation 法の提案と実験検証を計画している。アクチュエータの入力制約や,プラントの出力制約を考慮したアルゴリズムを提案する。また,提案手法は Multirate 制御で,制御入力の滑らかさなど多くの点で Singlerate 制御に対して優位性があるが,この「間」となる制御法を提案したいと考えている。具体的には,制御対象が高次であっても,逆系演算の条件数を改善する手法を提案・実験検証をすることを計画している。また,モーションコントロールのみでなく,Preactuationを用いる制御法を,パワーエレクトロニクスの一つである,昇圧コンバータにも拡張・適用しようと考えている。昇圧コンバータは非最小位相系であるが,非線形・時変のシステムであり,そのような系への拡張は挑戦的な課題である。
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