本研究では人体影響低減が可能な,予防医療用の小型・平面構造ウェアラブルアンテナの開発を目的とする.人体に着装することを考えるとアンテナはできるだけ小型のものが望まれる.しかし,一般的にアンテナを小型化するとインピーダンス整合は劣化し,周波数帯域幅は狭くなる.また,人体とアンテナ間での相互影響のため,自由空間中で設計したアンテナ特性を,人体表面に置いた場合に維持することは難しい.初年度で,人体によるアンテナの放射指向性や入力インピーダンスの影響度を調査した.時間領域差分法を用いた数値計算によって中央を短絡した長方形素子、水平方向の4分の1波長のL形状マイクロストリップ線路全2種類電磁結合給電式パッチアンテナを設計した。研究成果は,以下に示す. 1.人体影響の低減:人体によるアンテナの影響を軽減させるため,提案する方形マイクロストリップアンテナの接地導体板に誘電体基板を装荷した.従来型マイクロストリップアンテナの天頂方向での放射指向性は,自由空間に置かれた場合に比べ,人体表面に置かれた場合の利得が1.4dB低下している.これに対し,提案マイクロストリップアンテナは,1/20波長の間隔の誘電導体を使用する場合,利得と放射特性が自由空間での特性とほぼ同じであることを確認した.入力インピーダンスに関しても,自由空間及び人体表面に置かれた場合,提案アンテナの動作周波数のシフトが少ないことを確認した. 2.アンテナ帯域幅の拡張:周波数帯域幅拡張のため,アンテナはパッチの方面から,中央を短絡した長方形素子により電磁結合給電される.電磁界結合給電によりアンテナを励振させる場合,アンテナと電磁結合給電線路からなる2周波共振を利用することで,周波数帯域幅は比較的広い.したがって,アンテナの放射指向性は所望の2.4GHzのISMバンドにわたって,安定した放射パターンを得た.
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